なってもうた二刀流 ~ええことばかりちゃいまっせ~
DITinoue(上楽竜文)
わいの両手は刀になってしもうたんや
どういうことなんや・・・・・わいの両手が変形しちゃってるんや・・・・・
これやったらまるで、ギリシャ神話の誰かさんやないかい。
布団をつかんで起き上がりたいのにつかめへんし、ジリジリと鳴っとる目覚まし
時計も押せへんねや!!
「ああ、もううるさいわ!!」
そう言って、目覚ましのボタンを叩いたと思ったらすっぱりと真っ二つに割れて
しもうた。
「これ、マジであきまへんやないかい」
「自分、はよ起きてこんかい!!目玉焼きさめんでな!」
「あきまへん!」
ガバッて布団を捲し上げたらおかんは悲鳴上げながら逃げてしもうたんや。
「何で逃げんねん。はよ戻ってきなはれや!」
「嫌や!!自分どうしてん!!両手が刀になっとる!!」
「へ??おかん、頭どないしてまんねん」
恐る恐る両手見てみたらなんかカバーがあったわけや。ダランて両手下げたらカバー
がすんなり落ちんねん。そしたらな、わいの手が日本刀になっとった――
「おかん!おとん!はよ帰ってきてぇな。飯食われへんやんか!」
せっかく目玉焼きがあるのに何にも口をつけれへんってどういうことやねん。
フライパンの上でジュウジュウ言ってたらよだれが出るわ。
「わい、もうあかんわ!」
大好物を目ん前にして黙っとることなんぞ出来るかい!
スパッ!!
これ、夢ちゃうん?こんな自分の手で目覚ましとかフライパンが割れるってありか?
瓦割とは違うんやで。
コンコン
ドアの音がなっちょる!!やっと帰ってきたんか!!
「おかん!おおきに!って何でなん?!」
目の前には警官がずらずら待っとったんや・・・・・死ぬやろ!!
24時間テレビちゃうし、阪マラソンともちゃうんやで。オリンピックとも
ちゃうからな。これはホンマの逃走中や。
「待ちなさい!!」
全然関西弁ちゃう関東人が追っかけてくるんや!!
「これ以上近づいたら手ぇ下ろすで!!」
手ぇ下ろすってんはな、手を振り下ろすてことや。そうなったら前の関東人どうなる
と思いまっか?即死や即死。すぐさまご臨終やで。これには驚いたんかな、
ガチめなのお笑い芸人のネタにビビって警棒落としてしもうたんや。
そのまま、家に籠城や。わいはテレビで漫才見てるわけや。けどな、全く笑え
へんわ。今にもポリ公がうちに乱入しそうやからな。
ピーンポーン
ピンポンなったんで、ドアからちょっと外見るねんな。そんなら、警官みんな
おらんかったわ。
「自分、何があったんかいな。おまわりが家の周りに追ったんは何でや」
そこにおったんわな、他でもない山田君や。わいの題の親友でな、将来一緒に漫才
しよなって硬ーい契りを交わしてるんやで。
「この手どうしたんや?」
「起きたらこうなってまひた。そうなったらな、警察巻き込んで捕まえろ
捕まえろや。手以外丸々わいやんな?やのに何で気づいてくれへん・・・・・」
「かわいそうな田中君や。まあ、いいわ。剣道の先生めっちゃ怒ってんで」
「嘘やん!!」
剣道教室出かけたらおもろいことが分かったで。手の刀付け替えれるんやって。
っておもろいことがあったら漫才のネタやネタ。わいの手ぇみたら先生な、
「田中は何で遅かったんや、わけ説明せぇ」って怒ってたのに
「これはごっついな。見せてみぃ田中」って言ってきたんやで。まあ、それはそれで
ありがたいことなんやけどそのせいで手の筋肉麻痺してまいそう。
「ようし、これでみんなと普通に戦えんで」
林先生バリバリやる気やんな?もうこれはあかんやろ、あかん。だってこれな、刀に
ガムテープ1000回ぐらい高速で巻いたやつなんやで。
「田中な、二刀流ずるいで」
「二刀流ってでもカッコイイよな」
「武蔵や武蔵。宮本武蔵や!!」
「田中武蔵か?ええ響やん」
いじられるいじられる。めっちゃイライラするんやけど。
「これな、昨日の晩飯食ってすぐ寝たら牛にならずに武蔵になってん」
「これ、牛の角なんかなぁ?」
「せやなせやな!!」
山田君までそんなこと言うなや。
「はじめ!!」
林先生のけたたましい号令が鳴り響いたらな、山本君との戦いが始まるねや。
「てや!」
「てや!」
「田山対決~キバリ~!!」
「面!!!!」
山本君のキレイな声が響いてん。空そうやろ、二刀流やから有利って言っても、
重いし、疲れるし、両方動かせへんし、コントロール効かへんしで負けるわ。
これで、11戦11敗や。全然慣れてこうへん。
「二刀流のくせに弱いねんな」
「そんなこと言うなや。大変なんやで、二刀流。一回やってみ」
「おお、いいやんか。二刀流VS二刀流今からやるで」
林せんせ~!!!!!
最後の二刀流対決はな、当然山田君と当たるわけや。
「はじめ!!」
はじめを言われて20秒後に小手を取ったんや。
「やっぱ先輩武蔵は違うなぁ」
「おおきにい!!って。そらそうや!!」
二刀流も悪くあらへんな。このまま慣れたら慣れたで行けるな。
スパ
「痛いわ!!」
ヤバい!!中村君に手・・・・・刀が当たってもうた!こらあかんあかん。
「林先生ガムテで行けるわけないやろ」
「そうやろうか?行けるんちゃうか」
「行けてへんねん!!中村君の腕見い!」
林先生な、そうやって中村君の腕を恐る恐る見んねんな。
「ホンマやな、すまんすまん」
で、新しい問題があるんやけど・・・・・どこに帰ればいいんかってことや。
「わしんちに泊まり。独り暮らしやから大丈夫や」
「おおきに。お言葉に甘えさせてもらいますぅ~」
そうやってな、大人用くらいの中袖を着てな、大阪の街を歩き回るってめっちゃ
楽しい。山田君と中村君も付き合ってくれてな。通天閣と大阪城で写真撮ったんは
最高や。そのあとにおばはんに巻き込まれたんやんけ。でもな、おばはんに
タイガースキャップもらえたのは収穫やったな。
ガタンゴトン環状線が揺れてまふ。
「間もなく、福島、福島です。福島を出ますと、次は大阪に泊まります」
っていうアナウンスが流れた。そしたらな、どっかの女の人に刀が当たってもうた。
「痛いじゃない!!」
関東人やなこいつ。でも、洒落は意外とわかっとる。
「あ、お前は指名手配犯になっていた田中とかいうやつやな!」
「指名手配されたん?!」
深夜のお散歩でわいは死にそうになるわけや。福島駅で降りたら警官が来るわ
来るわ。そしたらな――
ボフッ
コンコンさんが化けたときみたいな煙が出てな、わいの刀は無くなってもうてた。
「無くなっとる!!」
正直な、無邪気に喜べへん。良いところも悪いところもあったからな・・・・・。
1日限りの二刀流生活はこうやって終わってしまいまひた。何で無くなったんかは
分からん。それは自分の想像に任せるわ。二刀流生活って大変やったけど楽しかった
かもしれへん。ただ、目覚ましと目玉焼きとイジリだけはもう勘弁や・・・・・。
なってもうた二刀流 ~ええことばかりちゃいまっせ~ DITinoue(上楽竜文) @ditinoue555
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます