130.エピローグ

 ――ゴールドのアカウント削除。

 その発表は多くのユーザーたちを困惑させていた。

 俺がお願いしたことでもあるので理解を示す者もいたが、それ以上にどうしてランキング1位になったゴールドのアカウントを手放すのか、その理由が分からなかったからだろう。

 膨大な時間もお金もかけて辿り着いたランキング1位。

 多くのユーザーが目標として掲げているランキング1位。

 ユーザーだけではなくリスナーをも楽しませていたランキング1位。

 その全てがゴールドのアカウントには備わっていた。


「中には削除するくらいならゴールドのアカウントを売ってくれ! なんて言う企業や資産家もいたくらいですよ」

「大変でしたね」

「お疲れ様です」

「ちょっと! そんなことよりもさっさとモンスターを倒してよね!」


 俺たちは今、ワンアースにログインして四人パーティでクエストに挑んでいる。

 パーティメンバーは俺、エリザ、リン、そして伍代さんのメインキャラであるフェスというアカウントだ。

 実は伍代さん、生粋のゲーマーらしく、フェスはランキング1000位以内に入るランカーだったのだ。


「まあ、私の1000位というのは、皆さんに比べるとだいぶ見劣りしますけどね」

「このアカウントのパーティならフェスが一番ランキングが上なんですから、頑張ってくださいね」


 俺はそんな軽口を言いながら、目の前に現れたモンスターの弱点めがけて連撃を加えて一瞬で倒していく。

 このクエスト、レベル200台のパーティだけで挑むような高難易度のクエストなのだが、フェス以外の三人はまだレベル150と足りていない。

 にもかかわらず順調にクエストを進行できているのは、技術力が高いからだろう。


「そろそろボス戦だな」

「これをクリアできれば、ついにレヴォ様もランキング1000位以内に入れますね」

「うぅ~! 私はまだまだなのに~!」

「メインキャラでログインしたらどうですか?」

「それじゃあDRギルドじゃなくなっちゃうじゃないのさー!」


 俺がギルマスを務めるDRギルドはフェスを加えて四人体制になった。

 だいぶ少ない人数ではあるが、少数精鋭と考えれば十分にギルドクエストを受けられるメンバーになっている。

 加えて俺たちには――


「ご主人様! フィーも頑張るの!」

「あぁ。絶対にクリアしような」

「はいなのー!」


 霊獣のフィーもいるので、実質五人パーティみたいなものだ。


「僕も戦えたらよかったのににゃー」

「気にするなよ、ニャーチ。俺はお前にずっと助けられてきたんだからな」


 そして、マスコットとしてニャーチもついてきている。

 AIであるニャーチは表示を消すことも可能だが、俺は今になってもずっと表示させ続けている。

 仲間ができたから消すというのは、ずっと支えてくれたニャーチに失礼だと思ったからだ。

 AIにそのような感情を抱くのはおかしいのかもしれないが、俺にとってワンアースは人生そのものでもある。


「これからもよろしく頼むぜ、ニャーチ」

「もちろんだにゃ!」


 俺は相棒と拳をぶつけ合い、前を向く。

 そこにはフィーがいて、エリザがいて、リンがいて、新しくフェスがいる。


「……さーて、いっちょクリアしてきますか!」


 気合いを入れた俺の合図に合わせてボスエリアに足を踏み入れた。


『――グルオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』


 六本腕の人型モンスターが大咆哮をあげ、HPバーが六本も現れた。


「これは強敵ですね」

「レヴォさん! 指示よろしくね!」

「足を引っ張らないように頑張ります!」

「ご主人様! 頑張るのー!」

「うっしゃー! いくぜー!」


 俺はゴールドではなく、セカンドキャラだったレヴォをメインキャラに代えて、これからもワンアースを満喫するんだ!


 終わり

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トップランカーになったセカンドキャラ ~奪われたアカウントを乗っ取り野郎と合わせてぶっ潰す!~ 渡琉兎 @toguken

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