129.後日談
「――な、なんじゃこりゃああああぁぁああぁぁっ!?」
その後、家に帰ったと同時に伍代さんから補填金の振り込みが完了したと連絡があり、俺はその場で口座を確認してみた。
するとそこには見たこともない額が記載されており、俺は思わず声をあげてしまった。
「……え? これ、俺の見間違いじゃないよな?」
……うん。何度数えても、金額は変わらないよな。
まあ、くれるっていうなら貰っておくが、これならしばらく配信しなくてもいいんじゃないだろうか。
「……いや、稼ぐ配信と楽しむ配信は違うからな」
ゴールドとは決別し、今の俺にはレヴォがいる。
孤独だったゴールドとは違い、エリザやリンもいるし、なんならデスハンドともプレイできるかもしれない。
……まあ、デスハンドとは利害の一致がないと無理だろうけど。
とはいえ、それだけでもゴールドとは大きな違いになっていた。
「……それにしても、これだけの金額、どうすっかなぁ。首藤さんに何かおごるのは確定としても、リンにはどうやってお礼をしたらいいものか」
……次に会った時にでも聞いてみるか。
金をよこせと言われたら考えてしまうが、リンもメインキャラはランカーだし、金に困っているなんてことはないだろう。
ワンアース内で恩返しできることであれば叶えてやりたいものだ。
「……早く明日にならないかな」
伍代さんからのメールには、振込完了の報告以外にも、ゴールドのアカウント削除の日程も記されていた。それが明日なのだ。
非常に早い対応だと思うが、それだけワンアース運営としては天童寺財閥の問題は迅速に処理したいと考えているのだろう。
ゴールドの削除に関しては多くのユーザーから厳しい意見が挙がるかもしれないが、当の本人である俺が削除を望んでいるのだから問題はないはず。
何かあれば俺が宣言すればいいだけの話だし、まあ何とかなるだろう。
「……明日が楽しみだな」
いったいどのように発表がなされるのか。
俺は、ゴールドの最後の結末を見届けなければならないのだ。
◇◆◇◆
――そして、ゴールドのアカウントが削除される当日。
時刻としては今日の一二時にワンアース運営から発表されることになっている。
全ユーザーへメールで、さらにワンアース公式ホームページでも文書で発表されることになっている。
「……そろそろだな」
俺はその時刻が来るのをモニターの前で待ち、一二時きっかりにワンアース公式ホームページを開いた。
「……これだな」
俺は一文字も見逃さないよう慎重に読み進めていく。
内容としては俺が提案したゴールドのアカウント削除や、各種ランキングの殿堂入り対応など、全てが希望通りになっていた。
加えて本来の持ち主である俺からの提案だということも記されており、これならば厳しい意見も少なくなるはずだ。
中にはゴールドを倒すことを目標にプレイしていたユーザーもいるだろうが、そこに関しては諦めてもらうしかない。
ゴールドのアカウントが残っていたとしても、俺はそれを使ってワンアースをプレイするつもりなどなかったのだから。
「……お、伍代さんからメールだ。律儀な人だな」
メールは文書に意見や反論はないかというものだった。
俺は問題ないことを記して返信し、一息ついた。
「ふぅ。これで俺の目標は達成されたわけだけど……また新しい目標を手に入れたわけだし、まだまだ止まれないよな」
椅子に座りながら大きく伸びをした俺は、そのまま立ち上がりVRカプセルに乗り込んだ。
「レヴォでのランキング入り、そしてトップランカーになるんだ!」
俺の新しいワンアース生活は、ここから始まるんだ!
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