電撃大賞の受賞作ということで拝読。タイトルで今話題のブルーライト文芸か?と思い読み始めてみたら、これは児童文芸……?
困惑しつつも読み進めていくうちに、何やらすっかり、カフカの可愛らしさにハマっている。特徴的だが、どうしてなかなか楽しく、癖になる文体だ。翻訳小説を思わせる言い回しにもセンスがある。元気いっぱいなカフカを見ているうちに親心が芽生えてきて、彼女と一緒に感動したり、危なっかしい行動にハラハラしたり、思わず笑顔になったりと……読み切る頃にはすっかりこのお転婆な少女に魅了されてしまった。ラストも爽やかで読後感も良い。
サブキャラクターの造形も素晴らしい。特にベルさんとクレオ(ベルさんについてはネタバレになるので割愛するが)クレオはツンデレの一言では言い表せない、現代的な悩みを持った等身大の女の子、といった感じでこれまた可愛らしいキャラである。同じ境遇の子たちに人気が出そうだ。
徹頭徹尾、なんとも王道でストレートで真摯な作品だった。昔の青い鳥文庫のような、小学生から中学生の読者を意識しているようでありながら、大人にしか分からないほろ苦さもある。NHKでアニメをやっていてもおかしくない、真に万人受けする作品だった。
新たな世界に飛び立つわくわく感とその不安。やっぱり大した事ないやという気持ちからの、初めて見る世界の美しさを実感するシーンは素晴らしい描写でした。
世界を知るために飛び出す勇気を与えてくれる作品ですね。
と、同時に家に帰りたいと思うところの描写も奥深くて、いろんな境遇の人に刺さる圧巻の心理描写だったと思います。
飛行機モノかあと、個人的には感慨深い作品。アリソンが好きだったものとしては飛行機モノだとどうしても連想してしまうのですが、そこらへんの、平成のころの戦争の実感と、令和の戦争に対する距離感が、なんかやけにリアルなように見えました。
ラノベがすっかり衰退した昨今、かつての電撃を読みたいものとして、これからの電撃に思いを馳せることができた作品です。飛びだって世界をしっておおきくなってこい、って感じ。
閉鎖的な浮遊洞窟にて、老人に囲まれて育った少女カフカ。
かつて冒険家であった祖父を持つ少女カフカは、浮遊洞窟の外の世界や空に大きな憧れを抱いている。
しかし、とある日「ふさふさの毛を持った犬のような不思議な人類」との衝撃的な出会いをきっかけに、少女カフカは壮大な空と外の世界へと翔け出す──笑いあり、涙あり、浪漫ありのドラマティック冒険譚!
冒頭から、物語への没入感が非常に高く、大変引き込まれました。
特に、「不思議な人類」である彼と少女カフカの出会いのシーンは、衝撃もありつつ、凄くドラマティックでワクワクせずにはいられません!
そして、作中で明らかになってゆくカフカたち「人類」と「不思議な人類」たちの関係性や歴史。かつて冒険家であった祖父の過去や謎。また、初めてできた「不思議な人類」との温かくて、くすぐったいような友情……最初から最後まで、魅力に溢れる最高の冒険物語でした!!
こんなにも素敵な読書体験を経験したのは、本当に久々のことです。
好きなシーンが数え切れないほどあります。
夢に満ち溢れたような、美しくも雄大で、儚くも感じる空の描写。可愛らしい「不思議な人類」たちとの交流、各キャラクターたちの迸る魅力。そして、主人公である少女カフカの成長と溌剌さ。全てが大好きです。
最後の展開では思わず涙が出ました……小説で涙するのも久々だったので、「ああ、久しぶりに自分にとっての最高の小説物語に出逢えた」と本当に嬉しかったです。
たくさんの方々にも、この素晴らしい読書体験をしていただきたく思います。
そして、願わくば。
書籍となったこの物語を……少女カフカの冒険をもっと追い続けたいと。
そう強く願わずにはいられないほど、本当に面白い作品でした。
改めまして。作者様には、深く御礼申し上げます。このような最高に素敵な物語を生み出してくださり、本当にありがとうございました!