最終話 それから
さて、僕についての話――不思議な体験談の話はいかがだっただろうか?
ともあれ僕は二度、金魚の妖精に出会い、そして僕自身の過去の記憶と母にまつわる記憶を取り戻すことができたのである。
え?
彼女は今どうしているかって?
急ぐな急ぐな。
ほら、そこに。
彼女と、この間掬った子は、ちゃぁんとこの金魚鉢に入っているさ。今も気持ちよさそうに泳いでいるだろう?
過去の清算ができたことは、これからの僕にとってもいい経験だった。
実家に戻って来たのは母の遺品整理を行うという理由だったが、もうひとつ理由がある。僕の失業についてだ。
いい機会だったのさ。四十歳になって、まだまだこれからだったのだけれど、とある事故に遭ってしまい職を失った。さて、これからどうしようかと悩んでいた時、母が死んだという連絡を受けたのだ。
全ては巡り合わせと言うべきか。僕は母に感謝した。
気力を失って生きる意味を失った僕が、母の遺品整理という『するべきこと』を手に入れることで、この世界に再び留まることができたのだから。そして彼女と出逢い、思い出した。
これからの僕がやるべきこと――。それは果たしてなんだろうか?
とりあえず今は『君』とゆっくりと過ごすことにしよう。
なぁに。
時間は余るほどあるからね。
金魚鉢 KaoLi @t58vxwqk
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます