最終話 それから

 さて、僕についての話――不思議な体験談の話はいかがだっただろうか?

 ともあれ僕は、金魚の妖精に出会い、そして僕自身の過去の記憶と母にまつわる記憶を取り戻すことができたのである。


 え?

 は今どうしているかって?


 急ぐな急ぐな。みなまで言うな。分かっているさ。

 ほら、そこに。

 彼女と、この間掬った子は、ちゃぁんとこの金魚鉢に入っているさ。今も気持ちよさそうに泳いでいるだろう?

 過去の清算ができたことは、これからの僕にとってもいい経験だった。

 実家に戻って来たのは母の遺品整理を行うという理由だったが、もうひとつ理由がある。僕のについてだ。


 いい機会だったのさ。四十歳になって、まだまだこれからだったのだけれど、とある事故に遭ってしまい職を失った。さて、これからどうしようかと悩んでいた時、母が死んだという連絡を受けたのだ。

 全ては巡り合わせと言うべきか。僕は母に感謝した。

 気力を失って生きる意味を失った僕が、母の遺品整理という『するべきこと』を手に入れることで、この世界に再び留まることができたのだから。そしてと出逢い、思い出した。

 これからの僕がやるべきこと――。それは果たしてなんだろうか?

 とりあえず今は『君』とゆっくりと過ごすことにしよう。


 なぁに。


 時間は余るほどあるからね。

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金魚鉢 KaoLi @t58vxwqk

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