詳細で濃密なファンタジー

 この作品を読んで一番に注目したのは世界観や人物像の細やかさでしょうか。
 とにかく設定が突き詰められていて驚きます。数多登場する人々の来歴、作中における魔術の扱い、国家関係や過去の戦争について。作中世界にリアリティを持たせています。

 ストーリー展開としては、誰か特定の人物を主人公に据えるというよりは、戦乱に向かってゆく世界の中で、大きな役割を担う登場人物たちが各々の使命のために動き、それぞれが絡まり合ってゆく様を大局的に見た物語です。
 前述の設定がしっかりしているからこそ、それぞれの行動や動機に説得力がうまれてくるもの。長大な設定だけに、流し読みするようなことは困難と思いますが、読み応えという点では読者の期待を裏切らない作品に違いありません。大ボリュームのファンタジーを読みたい人におすすめです。

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