雨に消え去る
底道つかさ
雨に消え去る
雨の烟りの中、黄色い膨満な形の作業着達が動いている。彼らは古い潜水服にレインコートを張り合わせたような容姿であった。
その時、一人の服が瓦礫に引掛かり黄色のカバーが裂け下の作業着に雨が触れた。
「ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝!!!」
絶叫。分厚い作業着が砂糖菓子の如く溶けて雨が中の人間を焼いている。
降っていたのは硫酸雨であった。
隕石衝突で蒸発し大気に溶け込んだ三酸化硫黄や、高熱で発生した一酸化窒素等の莫大な酸化物が、超強酸性の雨となり降り始めたのが11年前だ。生き残った人類は、シェルター内で賄えない物資を求めて外に出ては、その度に誰かしかが硫酸雨に溶解されていた。
部隊長が掌を下に向けて首元で左右に振る。
運が悪るい隊員が原型を失いながら徐々に動かなくなっていくのを見もせずに、他の隊員は淡々と作業を続ける。
地上には木も岩も真面な形を残しているものはとっくに無い。溶けた物は地を流れて全てが現れた場所、海へと戻っていく。
この雨は、全てを焼き流して元の姿へ還してしまう。
雨に消え去る 底道つかさ @jack1415
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます