――『アリス・リデル』に気をつけて。


 そう書かれたメモを握った三人目の犠牲者が、『eat me.』というカフェで発見された。

 死んだ記者はやはり先の犠牲者と同じくというもの。

 ただ少しだけ先の犠牲者と違う点があった。

 それは発見場所であった。

 先の犠牲者たちは閑静な住宅地の道路上で息絶えていた。しかし今回の犠牲者は『eat me.』というカフェのテーブルで息絶えていた。


 そのカフェの店主である『アリス・リデル』は消息を絶った。

 事情を聞こうにも本人が確認されなければ警察の面目が丸潰れである。

 しかし捜査範囲をいくら広げたとて、その『アリス・リデル』なる人物の顔や情報を知っている人間は一人もいないため、捜査は仕方なく断念される結果となった。

 その後、警察と出版社の醜聞しゅうぶん――とも思われる情報が何者かにジャックされ、真実と信じられてきた、そして記されてきた記事たちが全てであったと世の中に漏洩された。

 もしかすると『アリス・リデル』は、これが狙いだったのかもしれない。


 その後の『アリス・リデル』を知る者はいない。

 そうして夢見がちな少女アリスは、不思議な国へとかえって行ったのである。

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eat me. KaoLi @t58vxwqk

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