スピード感溢れる怪異退治モノ

学校の屋上にいる謎の青年『東雲夜狐』。イジメられている少女『相良綾華』は噂を頼りに、彼のいる屋上を訪れるが……。

妖怪や怪異を退治するバトル物として、綺麗にまとまった読切短編だと思いました。
魔妖との戦闘シーンでは迫力やスピード感があり、作品全体の展開のテンポも良くて、最後までサクサクと読み進めることができた。
ぶっきらぼうで口は悪いけど、根底には優しさがあって他人のために身体を張る夜狐を筆頭に、どのキャラクター達も個性的かつ魅力的でした。短いお話の中で、それぞれシッカリとキャラ立ちしているのはお見事です。

ただ、怪異モノとしてはバトル以外の描写がアッサリし過ぎているのが気になりました。
心に『魔』を棲ませてしまった人間の周囲で起こる、不気味な異変や身の毛もよだつ異常。そして何故そうなってしまったかを探る、原因究明パート。討伐後に訪れる、元の日常に戻った爽やかさ……などなど、その辺の要素が欠けているように感じました。
『魔妖が出ました、苦労して斬りました、解決です』だけでは、いくら短編とはいえ物足りなさを感じてしまいます。

とはいえ、文章力や構成力といった基本はキッチリできているので、その辺の肉付けがあれば、更に面白い作品を生み出せるとも思いました。
このまま続編や、新しい『依頼』に立ち向かうお話も、アイデアさえあれば無限に作れると思います。それくらい魅力あるキャラ達や内容でした。