病院

喘息が悪くなって、入院した。


入院先の病院で「俺」に1人の友達ができた。

小児ガンの女の子。



女の子だったけど、普通の女の子の遊びが嫌いな子だった。

周りの同年代の女の子たちが横で人形遊びをしていた。

もちろん「俺」はそんなのには混じらない。興味もないし。

ただただ暇で、クラスの男の子たちに借りた漫画を読んでいた。



すると突然話しかけてきた。

「ねえ、その漫画貸して!」


初対面で突然貸して!なんて言われてびっくりした。

あわあわして「俺」はどうすればいいかわからなくて、


「えっ、あっいいよ!」

なんて言って貸してしまった。


それがきっかけだった。

彼女の名前は青山絵美。笑顔がとっても可愛い子だった。

「俺」よりもずっと前から入退院を繰り返しているらしい。

夜中に看護師さんたちに何度も連れてかれているのを見た。



「俺」は絵美とよく話すようになった。

それは「俺」が退院してからも続いた。



「漫画、持ってきたよー」

「ありがとう!最新刊やっと出たね!もう読んだ?」

「まだ!絵美が読み終わったら読む!」

「じゃあお先に読ませていただきます。」



絵美は俺が退院して1年が経っても退院できなかった。

「俺」が変わってあげたかった。

会うたびに痩せている気がする。

あんなに笑顔を見せてくれるけど、本当はもっと苦しいんじゃないか。けど、「俺」が悲しい顔をしたら、絵美を心配させてしまう。



「俺」は笑顔を維持でも絶やさなかった。



病院から帰る時、いつもどんなに我慢しようとしてもポロポロと涙がこぼれてしまう。もしかしたら治らないのかなって。不安でいっぱいだった。無力だった。

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はずれ 巫 歪 @root56nico

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