男の子

「俺」は小学生になった。

幼稚園の頃から母に「女の子なんだから自分のことは「私」って言いなさい」なんて言われていたが、なんとなく違和感があった。

周りの子が皆、男の子だったからなのかもしれない。


「音瀬さん、あっちで一緒におままごとしよう!」

クラスの女の子たちが「俺」の周りに集まってきた。


正直、おままごとなんて全く興味がなかった。

横で五人ぐらいでサッカーをしている男の子たちが羨ましかった。

「俺も男の子だったらよかったのに」

そんなことを思いながら、渋々女の子たちに混ざっておままごとをした。学校の昼休みは憂鬱でしかなかった。



「おかえり、莉緒。学校楽しかった?」

「おかえり。宿題やってから遊びに行くんだぞ。」


「俺」が小学生になったと同時に、父は自宅でできる仕事を見つけ、毎日パソコンに向かい、母は毎日16:00からパートに行っていた。


「ただいま。ぼちぼちだったよ。」


靴を脱ぎ捨てて、急いで宿題に取り掛かる。

今日は16:00からクラスの男の子たちと遊びに行く予定があるのだ。

今日は何をしよう....そんなことを考えながら漢字ドリルを開き、素早くノートに書き写す。なんでこんな面倒なことをしなければならないのだろうと思ったが、宿題をやらないと担任の先生がに鬼の形相で叱られる挙句、宿題を2倍やらなければならないのだ。それだけは勘弁、やらざるを得ないのだ。


「じゃあ、行ってくる!」

「17:30には帰ってきなさいね。」



「俺」の毎日はこんな感じだった。

女の子とは遊ばなかった。なぜだろう。おままごととかお人形さん遊びとか、そう言う遊びに全く魅力を感じなかった。入学祝いに祖母からもらったレースのワンピース。一度も着てない。

もらったとき、思わず「ガン○ムロボがよかったな」なんていって、母に頭を叩かれた。





今となってはこの時期から「俺」は違和感があって、なんとなく周りの子たちと歪みが生じていたのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る