第17話
公演が終わり、ぞろぞろと席を立つ人々。出入口は混みあっている。音葉さんはコンサート後の余韻に浸るようにステージを見つめている。
「イツキさん、私、オーボエが吹きたい」
「でも、音葉さん病気は、、」
「そうですよね、イツキさんは優しいから、私のために止めてくれると思ってました。」
「でも、私このままオーボエを吹かないまま終わるのは嫌なんです。たった一回でいい、肺が潰れてもいい、私はどうしてもオーボエを吹きたいんです」
彼女の目は真剣だった。こうなった音葉さんは俺が何と言おうと気持ちを曲げることは無い。
「音葉さんがそうしたいなら、反対はしませんよ」
「本当ですか!?」
「ただし、演奏は一曲。事前の練習はしない。体に異変があったらすぐに演奏を止める。約束できますか?」
「はい。もちろんです」
そうして俺たちは音葉さんの演奏会のための準備を進めることになった。せっかくなら立派なホールを借りてやりたい。というので、まずはその資金調達からだ。音葉さんはコンビニでアルバイト。俺は描いた絵を展覧会などに出して、見に来た人に買ってもらうことにした。
「え!イツキさん絵を描いてるんですか!?」
「この前、一枚描いただけですけどね」
「良いじゃないですか!今度見せてくださいねっ」
「恥ずかしいですが、いつかは。」
君の音に沿って 東雲椛 @fakenovel
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