世界一幸せなカフェ

主人公のミシェルさんは、深い悲しみの中、雨に打たれて、とある路地裏のカフェに辿り着きました。
そこで出会ったマスターは、傷を持つ者。その言葉が彼女の心をゆっくり融かしていきます。
辛い時だからこそ、響く言葉がある。巧言令色は必要ありません。

雨あがりに、空の青さを思い出し、世界の美しさに気づくことがないでしょうか。この作品を拝読したとき、そんな瞬間を思い浮かべました。

他人との比較によって得られる幸せは、長続きしないと言われます。『本当の幸せ』はいつも自分の中にあり、自分の心と素直に向き合うことが一番の近道なのかもしれません。

知らずに犯してしまった過ち。取り返しのつかない失敗。程度の差こそあれ、誰にでもあることではないでしょうか。
そんな過去への向き合い方を、マスターが教えてくれます。
彼の温かく力強い言葉は、ミシェルだけでなく読む人全てに作用することでしょう。
傷ついたミシェルはマスターに救われ、胸を張って人生を生き直します。
でも、そのマスターは……

真摯に過去に向き合い、命をかけてたくさんの人を幸せに導いた彼。
どうか、彼にも魂の救済を。そう祈りたくなるお話です。

男に良いように使われて、打ちひしがれる主人公。そこに手を差し伸べるマスター。展開としてはよくあることなのかもしれないけれど、マスターの一言は、落ち込んでいる時にどんな人にでも効く言葉だと思います。
周囲の人達は心無い言葉ばかり浴びせていますが、だからこそ、主人公が前を向く姿、マスターの静かな祈りに似た態度が光るお話です。

身に付けた恐ろしい技術。
それは本当に、端的に、恐ろしいだけなのか。
シンプルに表層だけを捉えて、忌むべきものとカテゴライズしていいのか。
この物語は、それは早計だと投げ掛けてくる。
類い稀な技は、結局は、それを扱う人の心によって、いかようにも作用する、と。

技術の一面だけを捉えて、恐ろしいと断じてしまうのは、浅はかだ。
技術そのものを断罪してしまうのは、愚行だ。
そんなふうに、技を扱う人の心の置き所こそが大事だと、気づかせてくれる。

ダイナマイトが戦争激化の抑止力となる、という思いとは裏腹に、戦争の激化を結果的に招いてしまった、ノーベルの皮肉もそこにある、と。

深くて、胸に染みる結末…続きを読む

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（425文字）

落ち込んだ日。

いつもの駅の一つ手前の駅で、電車を降りた。

カフェをみつけます。
そこである話を聞いて……。


深い話でした。

印象的なフレーズあります。

タイトルの世界一幸せなカフェもいいです。タイトルの意味はぜひ本文を！