第5話 東進の恋愛応援

『今から一週間後だ。その時に俺が健二ってやつが外にいる間に声をかける。そこで喧嘩でもしてボコボコにしておくよ。その間、加代陸君が、健二の家に忍び込み、彼の金やら何やらを盗み出してくれ』



『なるほど、頭いいな!』


『バレずに忍び込む方法は僕が教えるよ。』



『へぇそんなことも知ってんのか』


『あぁ、昔映画で見たことがあるからね』


頼り甲斐のあるように見えた東進がいきなり不安の種のような存在に感じたのは気のせいだろうか。いずれにせよ加代陸は怪訝な表情を浮かべる他なかった。


『へ、へぇ…映画ね…』




***



『おはよう!今日も遅いね!』


『ごめん夏美…いつもありがと…』


昨日、東進の家で復習の作戦を聞いた。それが不安すぎて頭を離れず、夜もあまり寝れなかった。


『どうしたの?なんだが顔が疲れてるよ。』


『え、そう見える?』


『うん』


夏美は鋭いなぁ


『大丈夫だよありがとう』


『何か悩み事でもあるの?なんでも聞くから言ってね!案外、私聞き上手なんだ!』


そう言って夏美は笑顔で指でグッとサインをする


このテンションが今の僕にはありがたい。


そうだ。夏美をラーメンに連れて行かないとだったな…


『ありがとう。そうだ、今週の土曜日、ご飯食べに行かない?』


『えぇ!?やったぁ嬉しい!いいよ!なに食べに行く?』


『内緒だ。着いてからのお楽しみ。楽しみにしてろよー絶対美味しい店連れてってあげるから』


『うん!!嬉しい』


駅前の次郎系ラーメンを思い浮かべる。あそこのギトギトラーメンが最高なんだよなぁ。


食べ物のことを考え、お腹が鳴る


加代陸は自分のお腹がなった自覚がなかった。

夏美が美味しい店と聞いて腹を鳴らしたのだと考えた。

チラリと夏美の方を見ると、美味しい食べ物に出会えるよほど嬉しいらしく、にひひっと笑い、甘い表情になっている。



『週末が楽しみだね!』


『うんそうだね』


そう返すとまたも夏美はにひひっと笑っていた






学校に着くと東進が話しかけてくる。


『なぁなぁ、勉強以外でモテる工夫ってなんだと思う?』


互いに高校生だこれくらいの会話は普通だ


『わかんねぇなぁ彼女いたことないし』


『そうかー…俺実は、女子にデート誘われちゃったんだよ!』



東進がドヤる


『え!?まじ?いつ行くの?』


『今日の放課後!くぅー楽しみだぜ!!』


『おぉーええなぁ』


『悪いな!お先に彼女、作ってくるよ!』


『後で話聞かせろよーー?楽しみに待ってるからな』


『おう!』


『そろそろチャイム鳴るし、席に戻るね』


そういうと、東進はほくほく顔で席に戻っていった


東進…今日デートなのか…よし、あとをつけるか




その後、数学、歴史、現代文、古文、英語、地理の授業を終えた。その内、数学と古文の先生はどちらも地理の問題を出してきた。ふざけんな!



正面玄関で見張っていると東進が女を連れて出てきた。一緒に出てきた女子は中々かわいい。


『どこに行くかとか決まってる?』


『君が行きたいところに行こう』


『うーん』


女子が困った顔をしている


『俺のお気に入りの場所に連れてくよ』


『え…?わかった。どこにいくの?』


『ついてからのお楽しみさ』


二人がそんな会話をすると学校を出て行った


あいつなんだがいつもとキャラ違くないか?緊張してるのかな


身を潜めて彼らの跡を付ける



彼らは学校に最寄りの駅に入り、新宿方面行きの電車に乗った。


同じ車両に乗るとバレるので隣の車両から二人を見張る。



二人は新宿で降りた。くそっ交通費がかさむなぁ


東進が改札を通ろうと、Suicaをタッチするとピンポーンと音が鳴りゲートが閉まる


え、こいつだっさ


『ご、ごめんちょっとチャージしてくるね』


『え…うん』


女子ドン引きしてるじゃないか


すごく手を震えさせてチャージを終えると、南口に出て行ったそっちはゲイバーが多いと噂の新宿2丁目だぞ…大丈夫か…


『こっちって新宿2丁目じゃない…?』


女子はよくわかってるな。情報力が高い


『ん?そうだよ。大丈夫、君は何も気にしなくていい』


どうやらこいつは何も知らないようだ。それにさっきから君っていう呼び方が微妙にきもいな


その後もゲイバーの街に紛れこむ二人の跡を追う





おかしいな…もう30分も歩いてるぞ。駅から30分も歩いて行ける距離には別の駅から行った方が近いはずだし、そもそももっと近い出口から出ているはず…


まさかこいつ…迷子か!?



駅から出る前は一方的に話していた東進だが駅についてから様子がおかしい。ずっと携帯をいじっている。沈黙に耐えかねて女子が話を振っても


『あー』だの、『うん、そうだね』などと返事がが適当だ。


まさかこいつ…携帯で道を調べんのか!?


『リザーリ…リザーリ』


電柱にの影に隠れながら、二人を観察すると東進が何やらぶつぶつ言いながら携帯をいじってることに気づいた


リザーリってなんだろう。店名だろうか…そう思って調べると出てきた


バーだった。


おいおいこいつ大丈夫か…一応ゲイバーではないようだ。



東進が敢えてバーに行くのも何か考えがあるのだろう。一応道、調べとくか


道を調べるとあと5分で着くと出てきた。


『この先右方向です』


携帯のナビアプリから音声が流れて焦る。


電柱の隅に隠れたがあの二人がこちらに気づいていないようで、そのまま道を左に曲がった


よかった…気づいていないのか…ってあいつら左に行ったぞ。

まさか東進…地図を読み間違えてる!?



即座にあいつにラインをした


『違う、そっちじゃなくて右だぞ!』


そう送ると、彼はすぐにハッ!っとした顔をする。少し考える素振りをとり、道を戻って右に曲がった。


よし!伝わった!頑張れ!東進!次は左だぞ!












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