第14話 レコーディング
レコーディングスタジオには、いつも遅刻ばかりの良平がなぜか一番で、その次に将嘉、翔、優理だった。いつもは優理か将嘉の真面目秀才コンビが早いのだが、今回は優理が遅かった。
「ごめん、遅刻だな。色々やってて」
「ああ、大丈夫だ」
「まあ、こんなこともあるっしょ」
「そんなことより、ギター大丈夫なのか?」
「・・・・・まあ、なんとか。とりあえずやろう」
きわめて明るい雰囲気を出そうと努める彼だが、みんなは不安に満ちたまなざしで優理をとらえていた。
「大丈夫だから! 多分。ひとまず、やろうよ。な?」
「分かったよ。信じるぜ?」
翔は少し疑っていたが、優理は冷や汗流しながらも笑顔だった。
このレコーディングスタジオは代々木にある。
どうやら、ミュージックオフィスによく協力してくれる会社として、『レコードキーパー』という社があるそうだ。そのレコードキーパーは東京都の各地にレコーディングスタジオを構えている。
今回アハメロチームが予約したのは、代々木にあるバンドスタジオだった。
その中で、小学生は機材などに無縁なわけで、少々お金はかかるが、機材のセッティングをしてくれるサービスを購入しているから、大体はレコードキーパー所属のエンジニアがやってくれているはずだ。
と、思うと賢いアハメロメンバーは早くに入室したわけで、エンジニアはまだセッティング中というのだ。
「仕方がない。こっちに来てください」
色々、レコーディングの説明をしてくれた案内係が先頭にいた将嘉の手を引いた。
「こちらのレコーディングスタジオで練習しておいてください。機材は取り合えずここにあるので、これから用意しますね。本番の練習にはなるでしょう」
案内係が素早く機材を置くと、僕らは前日に運び込んだ楽器を持ってきた。
「それじゃあ、一回やってみるか。えっと、翔はここで、俺はここ。将嘉はここのドラムセットで、良平は・・・・・」
さすが博学。優理はメンバーをそれぞれの立場に導いた。
「なんで、そんな知ってるんだよ?」
「一度経験があるんだ。先輩のレコーディングに付き合ってな」
ふぅん。
それから、しばらく練習してたが、全くなれなかった。特に慣れないのが、異音が入らないために外からヘッドフォンに音声で指示が来ることだ。これは、慣れない。
一度、レコーディングを調べたときに初心者は自分たちだけでやるセルフレコーディングがオススメされていたが、オフィスの勧めでここにした。だが、ここまでキツイとは。
まあ、とりあえずみんな大丈夫そうだったから、セッティングが完了したスタジオに入室する。
「それじゃあ、みんな、お願いします!!!!」
「「「おねがーいします!」」」
ボーカルの翔の掛け声で、みんなのやる気は奮い立たされた。
「っしゃ! やるぞ!」
みんなの元に、ヘッドフォンからスタートの指示が来た。
一番最初は、翔の掛け声から始まる。
「ワン、トゥー、ワントゥースリーフォー!」
次に、将嘉のドラムが入ってくる。
ツツタツツタ、ジャンジャンジャンジャン!
ここから、キーボードとギターも入ってくる。
ジャガジャンジャガジャガジャガ・・・・・。
テレレレレレテレレテレレレレ♪
出だし好調。このまま、どんどん続けていく。サビに入ると、僕が歌に少し入る。
「「夢を持ち健康維持、勇気希望全てかけ合わせたらトリマMUTEKI♬ワン、トゥー、ワントゥースリーフォー、1ケタ台で完全勝利・・・・・」」
翔と二人で、しかも僕はピアノを弾きながら丁寧に歌い上げる。
「俺の生きざまワントゥースリー。たった一桁でMUTEKI! 夢健康ゆうきぼう! 全部そろって俺のエネルギー!」
・・・・・終わった。ミスはない。
「っしゃ!」
最初のレコーディングは見事大成功だった。
アオハルmelodyを奏でて DITinoue(上楽竜文) @ditinoue555
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