図書室の静寂が二人の心の距離を縮める――『図書室のエラトー』は、そのような物語である。
読書を通じて出会った詩織と宇佐美が交わす「文学」にまつわる対話は、まるで純粋な心が紡ぎ出す詩のように響く。
二人の関係性の変化を丹念に描き出す筆致は、読者の心を掴んで離さない。
この作品の中で、「文学」はただの背景ではなく、二人の間の隠された感情、未来への可能性を象徴している。
ドストエフスキーやリルケといった文豪たちの作品を通じて、自らの内面と向き合い、互いを理解していく。それはまさに、「文学」が持つ力、人の心に寄り添う力を見事に示している。
図書室は、二人にとっての秘密の閉じられた空間であり、彼らの関係が深まる舞台である。
その空間で交わされる言葉一つ一つが、二人の心を静かに動かしていく。
この作品は、青春の一瞬を切り取ったかのような物語でありながら、読者にとっても忘れがたい記憶となるだろう。
読後は、きっとあなたも本棚に手を伸ばし、忘れかけていた「文学」に新たな出会いを求めることだろう。
本作のヒロイン、詩織は文学少女である。だがそれ故に、好きな本について語り合える友人がいなかった。
図書委員の彼女が一人、閉館作業を進めていると、ある少年が本を返しにやって来る。
サッカー部のエースにして学校中の女子の憧れの宇佐美 武は、何故か詩織しか借りていない硬派な文学作品ばかり借りていて――。
この詩織と武の、互いを想う心の距離感がもう絶妙に描かれている!
もどかしいような、このままずっと今のままでいてほしいような、さっさとくっつけよオマエらと背を押したくなるような。甘酸っぱい恋愛という物が凝縮されている!
文学作品の説明も丁寧にされており、読むにあたって何の前知識も必要ない。それでいてクドくないのだから、これには作者様の技量の高さが窺える。
どこまでも透き通って綺麗な、これぞまさしく恋愛小説!な本作。
是非一度、ご賞味あれ。
1人1作品優しくコメントする企画の主催者のMegです。この度は企画に参加いただきありがとうございました。
全体を読んで、穏やかで優しい作品だなと思い、心がほっこりしました!
まずタイトルがいいですね。エラトーって文学的で素敵です。
黄昏時の図書室や、むささんを花にたとえた描写など、美しくかつ可憐で素敵です!
むささんのみんなラノベばかりで名文学を読んでくれないとか、うさみくんのみんな思いたいうさみくん像を自分に重ねているだけというのも、共感しやすいです。
作者さんの文学への造詣も読み取れました。恥ずかしながらリルケは詩人のイメージで、長編を書いていることを知りませんでした。。
ただもったいのが、せっかくのむささんとうさみくんのキャラクターを、ぜひ作中でもっと知りたかったです!
例えば図書委員のむささんと、サッカー部のエースのうさみくん、学校でのキャラや立ち位置が全然違うと思うのですが、友達といる時などに廊下ですれ違ったら、お互いどんな反応をするのか、恥ずかしくて避けるのか、それとも逆に堂々と話して友達からびっくりされるのか、つい妄想してしまいました。あまり細かく書くと長くなってしまうので、ちょっとした回想シーンや、2人の会話などでもいいので、かいまみてみたいと思いました。
またうさみくんはみんなが勝手に思ってるうさみくん像を重ねられることにうんざりしていますが、彼は普段どんなキャラですごしてるのかなと気になりました。やんちゃな元気系なんでしょうか??(←勝手なイメージです)
それとこれは個人的な好みではありますが、小さくてもいいので、何か事件や葛藤があればさらにキャラを深掘りできるのではないかと思いました!
例えば今パッと思いついたのが、うさみくんがサッカー部の友達に読んでる本を見られ冷やかされたみたいな事件があったとします(思いつきですみません)。その時うさみくんはどんな感情になるのか、むささんはうさみくんにどんな言葉をかけるのか、非常に気になります。。