自分の人生を概観できたとき、取っ払われる防波堤

 保守的に生きてきたであろう主人公が、余命宣告をされたことで、自分の人生の防波堤を取っ払い、空回りしながらも大胆になっていく様子に引き込まれました。
 何から何まで不正解だとわかっていながらも自分を止められない、という経験は悪いことではないはずで、ただ主人公の場合は、もっと人生の早い段階で消化してもよかったその心境を、人生の終焉を実感して初めて自分のものにしたということなのではないかと思いました。
 そう考えると、ラブホテルの一室でストレートに愛の告白をするところまでの一連の流れが、主人公という一人の男性の生き様を切実に表しているように感じられます。

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