少しずつ階段を上っていく

とある国から愛の国にやってきた男、2-2。これが彼の名前である。2-2は愛の国でQ-2を名乗る少女と出会う。少女の懇願により旅をすることとなった2-2とQ-2。二人はどこを目指すのか。二人の目的はなに。そしてたどり着いたその場所には、たくさんの花が咲き誇っていた。

この物語を通して、2-2とQ-2の関係がいいなと思いました。正しくは「関係の変化」です。この物語において二人の関係は複数の変化を見せます。変化があるわけですから、2-2の振る舞いもQ-2の態度も変化します。ここが、列車のポイント切り替えのようですごく面白いのです。
物語は2-2の視点で進みますが、おそらく物語を支配しているのはQ-2です。本作を読了された後は、Q-2のせりふや行動に注目してもう一度読み直してみてください。シナリオを一つ上の次元で楽しむことができます。
関係の変化と、Q-2視点。この二つが物語の大きな読みどころだと思います。

しかしQ-2。2-2との関係をどう捉えていたのでしょうね。ここは読み手によっていくつかの解釈に分かれるところだと思います。2-2の自然体な心があるからこそ、Q-2の思考が煌めきます。Q-2こそが思い悩む存在であり、その意味で2-2の対極にいたのかもしれません。私はQ-2の心底に悲しみを覚えました。
ゆえに、「この物語が幸福の色をたずさえて続きますように」
読者としてはそう願わざるをえません。
三階が頂上ではない。階段はまだ続いている。
2-2よ。そしてQ-2よ。
心を巡る旅は、まだ途中ではないか。

あなたもぜひ、この物語の階段を上ってみてください。