フリムキさん。その言葉の響きでなんとなく想像がつくのですが、こいつはヤベーやつです。
振り向いてはならない。こいつが声をかけてきても、けして振り向いてはならないのです。
本作の読みどころは、フリムキさんが少年たちに行うアクションと、少年たちがその時どのように感じるか、という心の動きです。
これが非常に丁寧に描かれています。臨場感があります。
しかし本作には複数の少年が登場するのですが、この短い字数で彼らの個性をうまく書ききっている。これも、臨場感を覚えるワンパーツです。お見事だなぁ……。
で、ですね。
このフリムキさん、嘘つきです。私が知っているだけでも二つ嘘をついています。
それは、振り向いたらいいことがあるように見せかけておいて、実はやべーことになるってところだろって?
いや、まあ、そうではあるんですけど。
まずこのフリムキさん……、本作のキャッチコピーには「後ろから囁く」と書いてあるのですが……、それはそうなのですが……、
囁くだけじぇねーぞ!!!!!!
ということです。わかりましたね、未読のあなた。
フリムキさんが囁くだけだと思ったら大間違いですよ。やつの攻撃については、ぜひあなたの目で確かめてください。
あと、もう一つ、決定的な嘘……というか策略があるのですが、これはここでは書きません。
それもあなたの目で確かめてください。
その。
瞳で……。
取り壊し予定の団地に友人達と共に肝試しへ行くことになった主人公。
その団地には「フリムキさん」と呼ばれるお化けが出るという噂が──。
誰もが聞いたことのある、怪談話の枕のような導入から始まる本作品ですが、雰囲気がどこか懐かしさを感じる作品になっています。
事細かに描写された古い団地の様子が頭に浮かび、子供の頃の体験を思い浮かばせるかのような、怖いんだけど懐かしいみたいな、そんな不思議な気持ちを抱きました。
個人的に子供達がフリムキさんに追いかけられるシーンはとても迫力があって、お約束のラストに向かって続く展開にゾクッとさせられました。
やっぱり心霊スポットに遊び半分で行くべきじゃないですね……笑