主人公は"投稿小説"。無名の彼女が試練を超え、世界中から愛されるまで。


 どうしても誤解されると思いますが、これはあの有名作をもじって書かれた小説「ではなく」、あの有名作をもじって書かれた小説「を主人公とした」小説です。いわば作品がヒロイン。
 そこを除けば、中身は一般的なサクセスストーリーと言えます。無名なヒロインが口コミから人気を獲得し、どんどん出世していきますが、そこにはつらい試練が待っていて……という(話の中身については、陽澄すずめ氏のレビューもご参照のほどを)。ことさらにどんでん返しもないし、ある意味、テンプレそのままの物語かも知れません。

 ですが、ここで声を大にして言いたい。我々投稿作家がもっとも憧れる話とはなんでありましょう? 作家本人がメジャーデビューすること? 巨万の財を成すこと? いやいや、まだ先があるでしょう。物書きの究極の幸せ、それは、「自分の作品が無数の人々から愛されるのを目の当たりにすること」ではないでしょうか?
 主人公を作家にした成功物語は時々出てきます。はっきり言ってウザいです。我々心の狭い投稿小説家が、そんなもの応援できるわけないじゃないですか 笑。
 けれども、主人公が小説なら? これはもう、感情移入するしかありません。生まれ持った設定ならではのトラブルの数々に傷つき、悩み、うちしおれる"彼女"。しかしやがてはそれも乗り越え、最後にはかつての潜在敵をも取り込んでゆく。その成長ぶりを目の当たりにすれば、日頃どんな作品を書いている作家であれ、感涙にむせぶこと必至ではないでしょうか。なにしろ、大輪の笑顔を見せているのは、あなたが書いた(かも知れない)投稿小説そのものなのですから。

 ですから、この作品はこうも紹介できるのです。いわく、「カクヨムに集う全ての者にとっての、もっとも美しい夢を描ききった短編」と。
 今日も新作を書き飛ばしているあなた。中断した先が書けなくて膝を抱えているあなた。そして、いつか書きたいとの思いをただ募らせているあなたにも。
 きっと本作は、尊い何かを見せてくれるはずです。……まあ、主役である小説の設定が設定なので、全年齢向け・万人向けの作品ではないかも知れない、とは言っておきますけれども。