全編、「どうしてこうなった!?」だらけのドライブ感がすごい。

 主人公は、なんだか妙な呪いのせいで病的なモテ人間として生まれついた少年。ただし、押しかけてくるのは男ばかり。というか、おっさんばかり。

 本作は、少年がおっさんたちと旅をして愛を育んだり、おっさんに旅をさせて愛を試したり、と、まあすごく乱暴に言うとそういう話。西遊記に竹取物語が連結して最後は七夕伝説と創生神話がミックスされるという、外形だけを語ると実に壮大な物語です。わけがわかりませんね。私もわかりません ^^。

 正直、天然気味のボケ少年(性的な意味でも)+盗賊のボス+大猿人、なんていうパーティーで面白い話になるのかな、とも思ったんですが、三角関係が服を着てロードムービーやるわけだから、それはもう色々なことがあって、このへんの心の細やかな機微なんかはなかなか読み応えがあります。そして、なんと言っても特筆すべきは地の文の存在感でしょう。作者の声たる語り手が名乗らざるメインキャラとなって、ずーっと強烈なツッコミ役を維持しているそのアクの強さたるや。何しろ身もフタもないフレーズばかりなんで、読み手はそこにさらにツッコまざるを得ず、決して多くはない人数の舞台が、一回りも二回りも騒がしい芝居小屋の雰囲気に感じられて、とてもにぎやかな読書体験ができます。

 ちなみに、中盤以降で現れるサブキャラもクセの強いキャラばかり。少年の両親とか関係者も含め、本作の登場人物は変態ばかりと言ってよいでしょう w。こんな「混ぜるな危険」だらけの人たちを何人もステージに上げて、うまく見せ場を作っている作者のセンスもなかなかのものです。

 一方で、本作は連載を続けながらギャラリーの声をどんどん取り込んでいったりもした作品なんで、きっちり計算し尽くして書かれた作品とはまた違うアンバランスさもあります。そこを面白いと思うか、あれ?と思うかは、読み手によって分かれるかも知れません(読み手の性癖によっても分かれるかも知れません)。ですが、そういう面も含めて、大変にチャレンジングな、ちょっと普通のBLタグじゃ読めないような中身になっているとは言えるでしょう。一読の価値はあるかと。まあ、一読してしまったら、そのまま止まらなくなるでしょうけれどね。

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