たぶん最後まで、「ミラージュ」はあなたの手をすり抜ける……。

 明日乃たまごさんは、エンタメ長編をいくつも発表していらっしゃる作家さんで、ファンタジーっぽいものも、青春小説っぽいものも書かれますが、メインはやはり核問題を軸にした社会派ミステリー、それと国際謀略系かと思います。

 その明日乃さんの新作ミステリー「運命のミラージュ」、概要とタグをざっと見るだけで「スナイパー」とか「ハードボイルド」とか「国家公安委員長」とかの言葉が並び、かねてからのフォロワーとしては、「おお、今回も本格スパイアクションものか!?」と期待したくなります。果たして読んでみると、中身は視点人物十人以上のグランドホテル形式、世界の闇と利権が火花を散らす、クールで非情なオトナのサスペンス、という感じに仕上がっているんですが……。
 と、この先はどうか直接読んでお確かめください。確かにサスペンスでハードボイルドでミステリーなんだけど……あれ? と思い始めた辺りから、すんごい展開になります。
 少しだけコメントしておくと、これはいわゆるエンタメ小説の枠ではないですね。限りなく王道エンタメに似せた、xx小説と言うべきかと。鉄壁のテンプレを求める読者は、ちょっとこのオチについていけないかも知れませんが、湾多はあえて申し上げたい。これこそが小説だと。小説読みの醍醐味とは、まさにこういうものなのだと。

 唯一気になるのが、今時点、「概要」欄に終盤近くまでのストーリーが全部紹介されてしまっていること。これ、やっぱり書き過ぎやないですかね w。本作を一から楽しみたい読者さんには、「概要」欄は無視してまっすぐ本文から読み始めることを、強くおすすめする次第。


 あ、中盤でキャラが増えすぎてダレた時のために、少しだけヒント。
 1.キャラたちの中で、一見すると謎の中心からいちばん遠いところにいるように見えるのは誰?
 2.そのキャラの職業は?

 では楽しい読書ライフを!

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