めくるめく展開、これこそ不条理カオス劇。

 タイトルからおわかりのように、糞尿譚である。下ネタ全開のスラップスティック・ブラックコメディとでも称するべき作品である。ランチタイムにスナックをつまみながら楽しむのは難しいかもしれない。だが、そのカテゴリーゆえに本作を忌避する方がおいでだとすれば、それはもう、絶対に貴重な読書体験を見逃しているとしかいいようがない。

 ちなみに作者のタカハシU太氏はシナリオライターである。すでに映画化・映像化されている作品も相当数あるらしいので、いわばプロのライターである。けれども、何しろ業界が業界なので、そっちの方向では全然食えていないらしい(このあたりの事情については、彼の「【作家日記】小説とシナリオのはざまで……【三文ライターの底辺から這い上がる記録】」 https://kakuyomu.jp/works/16816700429345333478
 に詳しい)。とはいえ、さすがにプロの端くれだけあって、この人の映像的な構成センスは特筆すべきものがあると思う。映像の中に映像が入り込んでリアルとイマジネーションの境界を何重にもぼかすようなシーンの数々は、文章一筋で書いてきたような人にはちょっと書けないストーリーなんではないだろうか。


 ストーリーの大筋は割と単純だ。洋式便器に下半身がはまりこんで恋人とのデートに行けなくなってしまった女性(便器女)と、会社帰りに大を催したものの、行く先々のトイレで信じがたい障害が立ちはだかって目的を達せず、夜通し大都会を駆け回る羽目になった男性(便所男)の生理サスペンスである。まあ実際に走り回って騒動を起こす展開は便所男中心になるのだが、一見関係なさそうな二人にいつの間にかつながりが出来、最後のクライマックスへとつなげていく作り方はなかなかにお見事。

 基本はギャグ小説なんで、小ネタの炸裂ぶりもすごい。シネコンに迷い込んだ便所男が目にする予告編の、有名作品を下品にもじったタイトルの数々は、映画通でなくても爆笑もんである。

 中には現実との境目が曖昧になったあまり、枝分かれしたまま行き止まりになってるストーリーラインもあるのだけれど、それはそれで不条理ナンセンスらしくていいと思う。ただ、いちばん最後のオチ、これは一日に一話一話読むタイプの読者だと「あれ?」と思うかもしれない。たぶんこれ、第十五話の話の続きのおつもりですね。忘れかけた頃にいちばんろくでもないラインで締めるという非道ぶり 笑。こういう細かなネタのつながりを味わうためにも、一気読みを推奨する次第。


 ところでこのタカハシU太氏、本人設定により、すべての作品にコメントを送ることができない。マジで多忙な日々を送っていらっしゃるので、コメント返しなどしてる暇はない、ということらしい。多分そのせいだと思われるのだが、この人の作品はPVにしろ星にしろ、作品の質のわりにとても数が少ない。本人の意思は尊重するけれども、期間限定でコメント受付OKにするとかしてもらえんものかとも思う。実は私には、ずっと前から彼には言いたいことがあった。「作家日記」を読んできた者として、言わずにいられないことがあった。せっかくのこの機会だから最後にこれだけ申し上げておこう。

 最近少しマシになったようですが、その食生活、自殺行為です。もっとちゃんと栄養バランス考えた食事とってくださいね。くれぐれも生き急ぐような執筆生活は自戒なさいますよう。そして二十年後も変わらずカクヨムで気を吐き続ける書き手でいてくださいますよう、願います。