八、

 かごめ、かごめ、

 あれから、ずっと、あたしはひとりで遊んでいる。

 あれから、もう、夜は来なくなってしまった。終わらない昼がずっと続く、だからあたしはずっとずっと遊んでいられる。帰らなくてもいい、

 ううん、云われなくたって、判ってる。お母様はもういない。あたしはもう帰れない。迎えに来てくれる人がいないから、誰も来てくれないから、帰れない、

 ここがどこだかも判らないし、どこにゆけばいいのかだって判らない。でも、もうそんなことはどうだっていい、あたしはひとりで遊び続ける、

 かごめ、かごめ、

 とんとん、とんとん、

 うづくまったままのあたしの周りに、跫音あしおとが聞こえる。うるさい、あたしはひとりで遊んでいたい。眼をつむっているから誰がいるのかも判らない、

 かごめ、かごめ、

 とんとん、とんとん、

 あたしの周りを、幾つもの跫音がくるくると廻る。軽い跫音、重い跫音、たくさんの跫音。もしかしたらせむしもそこにいるのかも知れない、

 かごめ、かごめ、

 とんとん、とんとん、

 気にしない、勝手にしろ。どうせあたしは眼を開けない、こうしていれば夜がある。け知らぬ夜、お母様の夜がある。あたしが唯一好きな場所、

 後ろの正面、なんて云われても、振り向くはずもない。あたしはずっとこの儘だ、あたしはいつまでも夜の中、あたしは、ひとり、ここにいる、

 かごめ、かごめ――

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蛇込メ ラブテスター @lovetester

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