赤いドゥカティの彼女

　1987年夏、東京の高校二年生、野島道夫は両親の不和に嫌気がさしていた。大ヒットしていたソニーのウォークマンCMで湖畔に音楽を聴きながら佇む猿、チョロ松を見て、猿も進化するのに、自分はいった何をいじけているんだ、と家出した。
　ヤマハのクォーターで北海道に渡る。そこでイタリアの赤いドゥカティを走らせる女性、ジュン、名車メグロに乗る六十代の高橋さんに出会う。ジュンはシーマに乗る怪しい男に追われていた。ソロツーリングの道夫は高橋さんと襟裳でキャンプし、キャンプ飯で初めて炭火で焼いた𩸽や、ミソ汁の具、海草フノリを味わい驚く。二人は十勝の露天風呂で幼児二人を連れた木村父子と知り合うが、この父は悲しい陰を宿していた。
　そこで偶然にジュンと再会した。道夫は恋心を抱く。依然としてシーマの影がちらついた…続きを読む