カクヨム屈指の物語は読みたくないか?

 レビューを書いておきながら言うのも変だが、他のレビューを読まずにとりあえず本作品を読んで欲しい、その方が面白い。
 この作品は王道である。騎士を目指す極貧の辺境出身の少年の物語である。剣と少しの魔法と学園の物語だ。今ではありふれた題材であるし、ここカクヨムでも多く投稿されている。
 しかし、その内容はテンプレートとなってしまったなろう系とは全く違う。才能も血統も知識すらない。前へ進むには己の足のみ、努力せねば舞台にすら上がれぬ、そんな泥臭い作品である。今ではストレスフリーが持て囃されるようになったが、この作品にはそんなもの存在しない。なぜなら数多く登場する登場人物全員が夢を叶えようと本気だからだ。才能ある者たちでさえ熱を持っている。皆が皆努力を惜しまない。だからこそ勝った負けたにリアリティがあるし、才能がないものにとっては尚更修羅の道を歩むことになる。簡単に勝たせてくれるほど甘くない世界観なのである。
 この物語に出てくる登場人物は皆非常に魅力的だ。学園生もライバル達も、そして敵でさえも。作中の登場人物の数はすごく多いのに皆魅力的であり、それぞれ何らかのストーリーがあるのだとわかる。そして、なぜか皆覚えてしまう。誰だっけとなることが登場人物の数の割に非常に少ない。それだけ作者が上手く描けているのだと思う。
 カクヨムでこのレベルの熱を持った作品がでて、今なお連載中であることは非常に貴重である。また、作者の富士田けやき氏は定期的に作品を更新し、最後まで作品を完結させてくれる実績もある作者である。
 本作品は中高生など、若い子達には特に読んで欲しい。最近のカクヨムにも、他にも、少なくなってしまった心を揺さぶるものが大なり小なりあると約束する。もはや大人になってしまった私ですら頑張ろうという気持ちにさせるものがあるのだから。とりあえず読んでみることをお勧めする。
 ただデメリットとして、2日おきの深夜更新まで待機する廃人状態になってしまう可能性があることは記しておく。面白すぎると言うのも注意である。どうかいいように影響されて欲しい。