死後から始まるイケメンエロ死神との恋愛&大親友への仕返し復讐ストーリー

ごく普通のアニオタJKだった『相沢美琴』は、大親友であるはずの『神林翔和』に殺されてしまう。しかし幽霊となった美琴はイケメン死神の『タナトス』と出逢い、自身の死の真相を探るため、そして自分を殺した翔和を恐怖させエンジョイするため、霊体となって翔和に一生憑きまとうことを誓う――。

仲良しだったはずの翔和が、どうして美琴を殺したのか?という気になる導入から始まり、読みやすい文章とテンポ良く進む展開のおかげで、最後までサクサクと読み進めることができました。
基本的に美琴の一人称視点で語られるものの、割と各キャラごとの視点にコロコロと変わったりもします。しかし読みにくさは少なく、ほとんどの場面で情景が脳内にスッと入ってきました。
展開もどんどん進んでいき、分かりやすいのに冗長さはない、という部分もお見事です。
更に、作品のボリュームに対してキャラ数は少ない方だと思いますが、それでも個性的なキャラ達は、どれも印象に残りました。
つまり文章においてもキャラにおいても場面作りにおいても、過不足ない最適なバランス配分になっている作品だなと感じました。

そして大親友に殺された理由を探りつつも、『霊力補給』の名目でエロいことをしてくるタナトスの誘惑や、生娘だったのにどんどん肉体的接触にハマッていく美琴の様子というのも、エロティックで魅力的でした。
更にはバトル要素も含まれ――ミステリーやサスペンスのテイストありバトルありエロありコメディありと、実に様々なジャンルが上手く絡み合って混ざり合いつつ、ひとつの作品として綺麗にまとまっている部分が、非常に良かったです。

ただ、エロ要素の印象がちょっと強すぎて、個人的に「それより本題を進めて欲しい」と思ってしまう箇所があったり、終盤でタナトスが美琴を迎えに行く場面では、どうしても『肉欲で繋がった二人』というイメージが拭えなかったのは、惜しいと感じました。
たとえ霊力補給がなかったとしても、互いに大切であり欠かせない存在……という部分をもっと強調や表現できていれば、更に感動的でエモいシーンとして素直に受け止められたと思います。
それと、メインのストーリー部分としても、翔和の動機や言動があまり腑に落ちず、結末においても和解するでもなく成敗するでもなく、いつの間にかフェードアウトしてしまった印象でした。『私と死神と親友の話』だったはずが、『私は死神と結ばれてハッピーエンド』だと、物語としては読者的に満足なオチとは言い難いです。

とはいえ作品のジャンルが『ラブコメ』となっているので、そういう視点で見れば希望溢れる幸せな結末だと思います。
『エロとラブ×続きが気になるストーリー』という『軸』は魅力的だったので、作者さんの今後の作品にも期待したいです。そういう作風や実力を感じられる、良質な一作でした。