タイトルとあらすじからは想像も付かない、重くて深い話。

物語の主人公村上春馬には、人気女優の神城明日菜という彼女がいる。

ただし遠距離恋愛で10年目、まともに付き合ったのは中学時代13歳の時の3ヶ月だけ。最後に会ったのは2年前の成人式、しかも遠目で見るだけ。

そんな彼女が久しぶりの休みに、地元へ帰ってきて主人公と過ごすつかの間の交流の話。主人公がちょっと変わった感性を持っていて、掴みどころのない性格をしているが、根底にあるのは優しさと切なさとやるせなさ。

演技とはいえ、自分より多くの回数を他人とキスしている姿、服の上や下着越しに身体を触られる姿、そんな彼女を彼はスクリーン越しに10年見てきた。黙って下唇を噛み締めながら。

お互いが大切で大切過ぎるが故に生まれる葛藤や無力感を、共通の友人の真央が優しく手助けする姿が印象的。長く女優を努めてきただけに、明日菜に(特に女優業について)エゴの強い発言が目立つが、それがよりリアリティと深みと物悲しさを生んでいる。

コロナ禍という、創作の世界ではなかった事にされる事が多い要素を、逆に物語の軸に据えた所が新鮮。他にないオンリーワンの世界を作り出している。

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