人々の謳歌する平和は、少女たちの血肉の上にあった

タイトルからざまあ物をイメージされる方がいるかもしれませんが、そちらがメインではありません。

非常に重い、戦争のお話です。あらすじで作者様が注意を促していますので、そういう内容が苦手な方は避けた方がいいでしょう。

ただ、引き込まれます。

ヒロインである聖女は、でっち上げの冤罪で引き立てられた断頭台にあって、命乞いもせず恨み言も述べず、戦場に散った仲間達を忘れないで欲しいと、それだけを娯楽を見る為に処刑場に詰めた人々に願います。彼女が守ろうとした人々に。

一人の少女の処刑で収束する筈だった波紋は、彼女の最後の訴えと、ある記者の働きで大きなうねりとなります。

ヒロインの回想と手記で、人々の知らない、支配者層がひた隠しにした戦争の真実が告げられます。

語り口、文章は淡々としていながら非常にリアル。これは作者様の力量もさる事ながら、現実にモデルがある事も大きな要素なのだと思います。

救いのある話ではありませんが、残酷描写がある事を差し引いても、是非読んで頂きたい。

第二部で仲間達を掘り下げるエピソードが、より深い余韻を与えてくれます。

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