彼女を変えた真実、真実から目を背けた者の未来

まず、作者様があらすじで仰っているように、苦手な方は避けてもよいでしょう。
自分の心を守るために必要な防衛なので。

それを踏まえて、言います。
もし読めるなら、読んでほしい。

異世界のお話です、一応。

けれど、同じ現実が、この日本にも、近隣国にも起きていた……いえ、今も世界のどこかで起きています。

戦争という国家レベルの争いに巻き込まれた名もなき人々。
使命を持ってひたむきに生き、その思いさえ踏みにじって死を望ませてしまう、悲惨な現実。

苦手なら避けたっていいと言いました。
けれど、絶対それをしてはいけないのは、国の中枢にいる、戦争の責任を取るべき人達です。

その責任を知るヒロインと、真実から目を背け、隠蔽すらしようとした国家中枢。

話はそれますが、私はこれを読んで、終戦時、稚内の電話交換所で命を絶った「九人の乙女」を思い出しました。
敵兵に汚されることを厭い自害した乙女達の志を尊いとは思います。けれどその影で「生き残ってしまった」ことへの罪悪感を抱えなから、声を潜めてひっそりと生きてきた女性の苦しみもあったことを。

戦争は醜いです。

その事を如実に語る名作です。
もう一度言います。

可能なら、ぜひ読んでほしい。

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