第9話 野望と願望

「魔法が存在しない…つまり…」

 絶望した表情で取り乱していた少女は、ふと我に返り、呟いた。

 その不敵な笑みに、僕は嫌な予感しかしなかった。


「私が一番だわ!!」

 案の定、邪悪に高笑いする幼女もどきを僕は遠い目で見ていた。

 これから僕はどうなるのだろう?

 横暴で短気で、スラム育ちも真っ青な、暴力こそ至高とする価値観の少女と運命共同体となっていることに、涙を流しながら、

「神様、たわわに実ったおっぱいを持つドSなお姉様を下さい。」

 そう天に願ったのだった。



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「決めたわ!!この世界を私が支配するわよ!!」

 魔法が存在しないと知るや、そう宣言した少女に、僕は夢で見た理想の女体を思い出しながら考えた。

「魔法を超えた科学…エロ漫画や同人誌みたいな媚薬やマジカルチン○があればあのお姉様たちだって…」

 僕が強制的に加入させられているESP対策室。

 その技術と能力を駆使すれば…

 あんなことやこんなことも自由自在だ。


「死ねっ!!このド変態っ!!」

 ニヤけていたのがいけなかったのか、それとも、無意識に考えていたことの全てが口に出ていたのが悪かったのか…

 僕の頭をでっかい杖でフルスイングした少女は、僕と共に気絶した。




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「ここじゃない…」


 無数に存在する異世界。

 そんな異世界に飛び散ることで逃げ延びた邪神ドグラは、完全体として復活するべく力を蓄えようとしていた。

 それなのに、力を蓄えるどころか、完全体を普段着と木の枝一本で完封する神を超えた天才の存在に怯えていた。


「ここでもない…」


 神が降り立つ時のみ誕生する筈の異世界へのゲートを自力で構築し、異世界旅行しながら邪神ドグラの分身を消失させ続ける銀髪の女に。

 

「ねえ?妹はどこ?」

 

 木の枝を捨て、素手で邪神をしばきながら問う女にドグラは泣き叫ぶしかなかった。




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「痛っぁ…」

 軽く触れるだけで激痛の奔る側頭部。

 痛みに耐えながら身体を起こす僕と…

「殺してやる…私をこんな目に合わせる奴は、絶対に殺してやるっ!!」

 同様の痛みを負う少女は仰向けに寝転びながら、邪神の様な笑みで殺気たっぷりに笑っていた。






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