第4話 思春期の男子中学生はそんなもん

「アンタ、名前は?」

 我が物顔で僕の部屋、そのベットに脚を組み、踏ん反り返って座る少女はそう僕に高圧的に言う。

「人に名前を尋ねる時は、先に…ごめんなさい、蘇我|衛理えいりです…」

 ちょっとカッコつけて言おうとしたけど、殺気の籠もった鋭い目つきで睨まれ、すぐさま正座し、謝罪して名乗った。

「『ソガ・エイリ』?変な名前だけど、奴隷には贅沢ね…『ガ』くらいがアンタには適当な名前じゃないかしら?」

 名乗った僕に対し、そんなことを言う少女。

 名前の文字数で価値が決まるということなのか?それとも、僕は蛾と同価値ということなのか?

 どちらにせよ不服を申立てたくなるのだが、命が惜しいので、今は黙っておく。

「まあ、アンタの名前なんかどうでもいいのよ…」

 自分から聞いたんじゃないか…

 少女の呟きに、そんな言葉を飲み込んだ。


 そんな理不尽な少女は、呆れた様子でベットに倒れ、問う。

「アンタ、昨日と今日、どんな夢を見た?」

 彼女の質問は、まるで僕が彼女と彼女の居た世界を夢で見たことを知っているかの様なものだった。


「最悪だわ…」

 夢で見た光景を語り終えた僕に、少女はそんな呟きを漏らす。

「僕だって最悪だよ…なんでこんな貧乳の幼児体型が来るんだ…あのエロい身体した魔女のお姉様じゃないんだよ…」

 それと同時に、夢を再度思い出し、憤りを感じた僕も欲望を漏らす。

 目の前の少女は、確かにお人形さんの様に可愛い。

 だが、僕の性癖このみとは対極に位置するのだ。

 蘇我|衛理えいりとして生まれ、物心がついた頃にはおっぱいが好きだった。

 正確にいえば、大きなおっぱいが好きなのだ。

 それは、生まれ持った性癖このみであり、変えることは出来ないのだから仕方無いのだ。


「ひ、貧乳の幼児体型ですって…また言ったわねっ!!」

 ぷるぷると震える少女。

 その震えが、怒りとか憎しみなのだと、流石に理解出来た。

「私だって、後ちょっとしたらママみたいになるんだから!!…私を馬鹿にした奴は絶対死刑!!」

 顔を真っ赤にしながら、でっかい杖をぶん回す少女。

 辛うじて躱したその勢いに、確かな殺意を感じたが、僕は彼女の発言を聞き、それどころじゃなかった。

「ママ、ママって言ったよね?畜生っ…人妻かよ…最高じゃないかっ!!なのになんで…」

 あのエロい魔女のお姉様が人妻で子持ちと知り、益々絶望し、涙した。

「やっぱ死ね!!変態っ!!」

 そんな僕の側頭部を、彼女の悲鳴にも似た怒声と共に、杖よるフルスイングが襲った。












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