第5話 紳士を名乗る変態

「うぅ…」

 頭の痛みを抱えながら、目覚める。

「変な夢を見たなぁ…」

 そう信じながら身体をゆっくりと起こし、周囲を見る。

「夢じゃなかった…」

 横たわる少女の姿が見え、そう呟いて天井を見上げた。



−−−−−−−−−−−−−−−−−



「気絶してるのか?」

 キューと目を回し倒れる少女の顔を覗き込む。

「顔だけは可愛いのになぁ…」

 そんな感想が無意識に言葉となって出た時、ドタドタと階段を登って来る音が響く。

「えい君大変!!お寝坊してる!!」

 慌てた様子で僕の部屋を開けて言う声が響いた。


「…え、えい君、その子誰?」

 僕の部屋に飛び込んで来た、露出の多いドレスを纏った女性が青ざめた表情で僕に問う。

 寝ている見た目は幼女な暴君の顔を覗き込む僕は、客観的に見たら、犯罪者にしか見えないだろうなぁ…

「えい君が…えい君が変態さんになっちゃったぁ~!!」

 崩れ落ち、泣き叫ぶ女性。

「ち、違う!!誤解だよ母さん!!確かに僕は変態で助平だけど、貧乳に欲情しない紳士だ!!」

 咄嗟にそう叫ぶ。

 僕は何を言っているんだろう…?


 そう、彼女は実の母である蘇我笑四季えみし

 父が亡くなって以来、都内最大の歓楽地、そんな場所にある老舗スナックのチーママとして働いている(源氏名は亜美菜あみな)。

 三十代後半、子持ちのアラフォーだというのに、二十代後半にしか見えないが、色っぽいおっとり美人で、スナックでは人気者らしい。

 

 そんな仕事をこなし、基本朝帰りな母と顔を合わせるのは一週間で二、三時間だけだが、この日は、遅刻確定の時間になっても起きて来ない僕を心配し、部屋に駆け込んで来たらしい。

「えい君…おかーさんと一緒に警察行こ…」

 おいおいと泣きじゃくる母。

「違う!!本当に誤解だ!!僕はあの叔母によって、おっぱいが大きい年上の女性しか愛せないんだ!!」

 何故僕は、実の母に性癖を暴露しているんだろう?

「こんな貧乳…」

 横たわる少女を指差したタイミングで、的確なアッパーカットが、僕の顎を撃ち抜いた。

「変態っ!!死ねっ、変態っ!!」

 意識が遠のく最中、真っ赤な顔で僕を一瞬でKOした少女の顔と叫びが聞こえた。

 


 

 

 

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