このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(245文字)
時は明治。男性を騙して現行犯で捕まった夜鷹の女は、偽名を名乗った。実は彼女の父親は、歴史を大きく動かしたあの人だった——。驚きの展開の連続で、パソコンに目が釘付けになってしまいました。ラストまで読めば、幕末好きな人は皆大きな感動を覚えるに違いあありません。稀に見る素晴らしい作品でした。
警察に捕まりながらも、そこで自分の父との縁に救われる主人公の夜鷹が、印象的なストーリーでした。
男達を眠らせてから金だけ抜きとる、純潔のよだか。身を男に差しだすことをせぬ彼女は《近藤勇》の娘と名乗る――《近藤勇》には何人もの愛人がいたとされています。なかには美しき芸妓が幾人もいたとか。二千文字弱という短い小説ですが、想像をそそられる素晴らしい展開に圧倒されました。作者様は新撰組についてそうとうにお詳しいとみえます。袖振り合うも他生の縁――歴史には記されざる縁の邂逅を、垣間見せていただいたきもちです。
近藤勇の血を引くという女。そして今は警官となった藤田五郎こと斎藤一の思わぬ出遭い。新選組最強の男といわれ、無敵の剣をふるった剣客の寡黙なうしろ姿が見えるようです。
序盤、淡々とした場面からの後半、オチがとっても鋭いので、やられた~感があります。物語の時代背景は少し暗く、少し明るい。短編ゆえ、ぎゅっとエッセンスが詰まった本編。作者さまは、強い女性or自立した女性をよく書かれますが、本作の主人公は蓮っ葉な部分を持ち合わせつつも爽快。凛々しい。ネタバレになってしまうので伏せますが、新選組好きさんには是非読んでほしい。納得の作品です。