魔女と魔法使い

コノハは魔女である。

魔法を行使する事は呼吸をするのと同等の難しさである。つまりは簡単ということだ。

コノハは魔女である。

それは死後の世界でも消えるものでは無かった。

コノハは芝生に寝転がっていた。

孤独は嫌いではなかった。しかしながら寂しさを感じないわけでもなかった。

「誰か来ないかな。」

と呟いた。


死後の世界に魔法行くことは可能なのか。

アズサはその問いに実践で答えを出すことにした。そのためにアズサは指を鳴らした。

目を閉じて、目を開けた。

目の前には芝生があった。無限に拡がっている気がした。

「コノハ。」

小さな声で名前を呼んだ。目視できていた、聞こえていた自信はなかった。

「名前を呼ばれるのは、初めてな気がする。」

コノハの声だった。あの日から数日は家の外へ自発的には出ることは無かった。学校を休むことは簡単に許可が出た。ユイは元々休みがちのようだった。

「魔法でここ、来れるんだ。」

「来れるの、今知ったばっかよ。」

「そっか。未知のことをするのって、やっぱり怖くない?」

「分からないけど、恐怖は感じていなかったと思うわ。」

「そうなんだ。」

「何話すかも考えないでここに来たの。なんか話して貰ってもいい?」

「じゃあ、昼寝しない?」

「芝生で横になるのって、気持ちいいものなの?」

「私の感性的には気持ちよかったよ。虫とかもいないから、安心して。

ここは私だけの空間だから。」

「じゃあ、甘えさせてもらうことにするわ。」

「うん。

そういえば、なんかふと思ったんだけど、なんでアズサは自分から視力を取り上げたの?」

「理由…話すと長くなる気がするけど、大丈夫かしら。」

「うん。そもそも話すことが出来るなら、アズサからしても嬉しいことなんじゃない?」

「そうね。」


「不思議な人がいるんだね。」

「私も何度も驚かされたわ。それで…」

「アズサ、楽しそうだね。顔、なんだろう、少し笑ってる気がする。」

「そう?かしら」

「うん。あとごめん。さっき魔法を使ったの。心を読む魔法、勿論、アズサの」

「酷いことするのね。」

「アズサは魔法使いなんだよ。

実感出来てないだけ。アズサは魔女じゃない。」

「どういうこと?」

「アズサは、私を救った。ユウも、リョウも。アズサに救われてるんだ。ここに一人でいるのも暇だから、たまにみんなのことを見るんだ。

笑ってたよ。二人とも、作り笑いじゃない。心の底から。

それに今私寂しいって思ってた。だから人が来て欲しいって。そこにアズサは来てくれた。アズサは私を2度笑わせてくれたんだ。だから悪い魔女なんかじゃない。

君は優しい魔法使いなんだよ。」

アズサは大粒の涙を堪えるのをやめた。


アズサはすやすやと寝息を立てていた。コノハは膝枕をして背中を優しくさすってあげていた。

「辛かったね。」

アズサは少しして起きたが、コノハが口を開いたから、寝たふりをした。

「無理にあっちにいる必要はないのに。」

あっちがつらいなら、ここにいればいいのに。

アズサはもう一度眠った。今度は深く。何時間も寝た。


指を鳴らし、目を閉じ、開ける。目の前は自分、いやユイの部屋だ。

奪うことの楽しさ、辛さ、魔法は教えてくれた。しかしながら魔法は唯一教えてくれないことがあった。

きっと、これからの行動は、正しくはないことだと思っていた。

それも悪くない。

それでいい。

ユイはアズサでいてもいい。

アズサはユイでいる必要なんかない。

行こう。

跳躍。そしてまた指を鳴らした。

髪の毛が浮いた。風に乗っていた。重力のままに落下しながら。

雲が見えた。

ビルの屋上が見えた。

どこかも知らない家の屋上が見えた

地面が見

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔女と魔法使い 佐音 @Nel_rb

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る