悪意との共存
そこから特に苦労はなかった。理由は簡単で一人でも突拍子のない事実を理解してくれた人がいたことが理由だった。アズサは躊躇っていたのだ。魔法が身近なものであるのはアズサだけなのだから。
魔女の存在は有名になっていった。次に来た人間は少年だった。リョウと名乗った彼は恐怖心を消したいと言っていた。アズサは何人もの願いを叶える上で自分の元にくる人間は何かしらアズサの持つ"普通"からかけ離れたものを持っていた。そもそも魔法の存在を信じている人間はいたとしてその事実を受け入れられる人物は少ないのだろう。しかしながら願いを叶えられた人物が増えれば増えるほど魔女の存在は有名になっていた。コノハはそんな時に現れた。
アズサのこの欲求不満は思わぬところで解消された。アズサは形を問うていなかった。欲しかったのは願いを叶えることで役に立ったという実感であった。それはコノハによって得ることができた。アズサはコノハにも、ユウにも。両者の役に立ったのだ。それはとても嬉しいことだった。
アズサは優しかった。人の役に立ちたいと思った。人に危害を加えたくないと思った。これを優しいと表現するのは些かおかしいのかもしれないが。
アズサは他人に危害を加えることを望んでいた。しかしアズサは人に危害を加えると心が痛む人間であった。故にアズサは対価という言葉を免罪符にしたのだ。
奪うこと。それは確かに喜びではあった。しかしアズサは泣いていた。コノハを殺したのは自分であるという事実を受け止めた上で。それがコノハの望みであることを知ってる上で、アズサは涙を流した。
コノハは今何をしてるだろう。
私は何がしたかったのかしらね。
魔女、私は魔女。不可能はない。
だからこそ、苦しい。欲求を満たすのが簡単なのは、苦しいの。
でも、少しでも
誰かが私を肯定してくれれば、それでいいかな。同情でもいいから。
一種の有名人になった私。
そんなの、別に最初から欲しくなかった。手段だ。私の元に沢山人が来て沢山願いを叶えて、私は感覚を奪う。それが私の悪意との共存の方法。きっと、きっと正しい決断だったはずよね。多分。
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