火を鎮める歌を詠まない?

naka-motoo

鎮火は消火と違うんだ

恩人の文章は今となっては誰にも読まれず


読んだとしてもそれを誰も実践せず




ただ消えゆくのみなのか




恩人の文章にもとづいてわたしが書いた文章も




誰にも読まれず


ただ消えゆくのみなのか




けれどもよく考えたら


恩人自身が手ぬぐいを頭にまいて


死ぬまで畑仕事をし


死ぬまで赤の他人のココロの苦しみを鎮め


自らが病となり床に伏せってなお「来たか来たか」と法を説いてくださった




ココロ病むひと


苦しいひと


胸をかきむしるような嫉妬と恨みに怒りの炎を燃やす者すらを




「そうかそうか」




となぐさめお救いくださった






恩人は


「愚かなわたしが筆を染め造りし歌であるけれどほんに誠と知られたら 後世が大事とはやく知れ 未来が大事と知れたなら いちじもへんじも片時も 急ぎて後世を願うべし」


と歌った




恩人がほんとうの地獄をねじ込まれて


それを旅の絵師に描かせたその偉大なる功績を




誰も知らない




でも、わたしは知っている




ほんとうのことを言っているのは誰なのかを




ほんとうのことをしているのは誰なのかを




ほんとうのホンモノは誰なのかを




わたしの根性ではおぞましい言葉を吐くだけだから




恩人が遺してくれた歌を歌おう



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