第25話 NHT報道局3

18時20分。

NHT報道局内は、ある種の恐怖と怒号が入り交じった異様な雰囲気の中にあった。

だが、ある一区画だけはしんと静まり返っていた。

そこでは、今回のバイオテロについての緊急会議が行われていた。

ワタナベとコンノも会社を取り仕切る役員たちに混じってその会議に参加していた。


ワタナベは緊張しながらも、落ち着いたトーンで話した。


「我々が発する情報で、市民の方達がパニックを引き起こす様なことがあってはなりません。不確かな状態での発言は控えるべきです。」


コンノはワタナベの言葉に頷いた。

そして、少しの間をおいてから、ゆっくりと語り始めた。


「ですが、それと同時に市民の方々には知る権利があることも事実です。警察の公式発表をただ待つだけでは手遅れになる可能性もあります。危険は伴うかもしれませんが、現地にも向かうべきです。現地には私が向かいます。報道に携わるものとしての勤めを果たしてきます。」


初めに連絡が入ってから数時間がたち、不確かではあるものの、情報が集まり始めたことで、コンノやワタナベはすっかり覚悟が決まっていた。

むしろ、この姿勢こそが本来の彼らの姿だった。


会議が終わると、コンノは一緒に現地へ向かう記者やカメラマンのチームと少し話をした。

そして、足早に局を後にするのだった。


一方、ワタナベは局内で緊急特番の準備を進めることとなった。


彼らにとっても長い夜が始まろうとしていたのだった。

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アウトブレイク 持瑠 @mochirun

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