冬
冬の到来。
「赤いきつね」や「緑のたぬき」のようなカップ麺が、いっそう美味しく感じられる季節になった。
小説執筆の面から見れば、いくつもの小説投稿サイトで、それぞれのサイトを代表するような大きなコンテストが開催される時期だ。
もちろん、僕も張り切って参加する。
冬休みの宿題はさっさと終わらせて、せっせと小説を書く毎日が始まった。
夏と同じように、夜遅くまで机に向かうことになるので、夜食が必要だった。
今回も親の手は借りず、自分で用意する。ただし、隣のおばさんからいただいた「赤いきつね」と「緑のたぬき」は、夏に食べ尽くしてしまったので……。
冬の小説執筆のお供は、自分のお小遣いで買ってきた「赤いきつね」と「緑のたぬき」だ。
「わざわざ買ってくるなんて、そんなに気に入ったの?」
と、母は少し呆れたような声で笑っていたが……。
笑いたければ笑えばよい。僕にとっては、幸せを運んでくれる狐と狸なのだ。
いただきものの「赤いきつね」と「緑のたぬき」でも、一次選考に通過できたくらいだ。僕が一銭も使わずにそれならば、自腹で買った「赤いきつね」と「緑のたぬき」を食べたら、それ以上の効果が期待できるのではないか。
つまり、今度こそ受賞だ。
「『赤いきつね』と『緑のたぬき』こそが、僕に幸せをもたらしたのです!」
受賞者インタビューでそう言える日を夢見て。
僕はこの冬、カップ麺であたたまりながら、小説を書き続けている。
(「幸せを運ぶ狐と狸」完)
幸せを運ぶ狐と狸 烏川 ハル @haru_karasugawa
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
カクヨムを使い始めて思うこと ――六年目の手習い――/烏川 ハル
★209 エッセイ・ノンフィクション 連載中 298話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます