不幸を顧みた上での幸せの形か。

哀愁漂うユートピアのお話。
過去の悲劇をちゃんと知らせ、情に訴えることによって不幸な出来事を阻止できたある登場人物。その技量と執念には驚かされました。また、本を読むだけで悲劇を避ける世の中になるなんて、本当に夢のようなお話だと思いました。
でも、読んでいるとまた、なんとも言えない虚しさも感じさせました。悲劇を記録した登場人物の末と、協力者の末と、重さに耐えきれなかった永住権希望者たち。想うとまあ、なんとも言えないざわめきが胸の中に生まれました。
淡々とした丁寧な語りがまた相まってよかったです。
今回、読書が少し苦手そうな永住権の希望者は、耐えられるのでしょうか。
個人的に、あっさりしつつも読み応えのあるユートピアでした。