カウントダウンするゾロ目

@koi-koi

カウントダウンするゾロ目

 はい! 今夜も始まりました、内山光一のAクール。さっそく、最初のコーナーから始めていきましょう!


 もうお馴染みの、超長寿コーナーですね。『あなたのホラー体験、教えてちょうナイト!』 今回もたくさんのメール、ありがとうございました! エントリーナンバー888番……お、ゾロ目ですね! のんのん仮面さんからのお頼りです――。 




 内山さん、こんばんは。いつもラジオを楽しく聴いています。私は高校一年生の女の子です。今、私が体験している出来事をお話しします。


 10日前、私の目に999という数字が入って来ました。下校中、いつも通るスーパーの店頭で、果物に付けられていた値段です。特に珍しくもないので、この時点ではあまり気にもしていませんでした。


 9日前、ヴァイオリンの練習で楽譜を開いたところ右上にページ数の8があり、すぐその左隣りには二連八分音符が。五線から上にそこだけが飛び出ていた事で、とっさに「あ、888だ……」と思いました。昨日、999を見ていたのを思い出し、何となく面白く感じました。


 8日前、「じゃあ今日は、777の日だな」と思って過ごしていると、777も他のゾロ目の数字も見ず、一日が終わりました。さすがに3日連続はないかと、ちょっとだけ残念な気持ちでした。


 7日前、もうゾロ目の事は忘れています。特に何も意識せずにコンビニで飲み物とお菓子を買って、千円札でお釣りを貰ったのですが、その金額が……なんと666円でした。私はそこで、さすがに不気味になりました。ラッキーセブンで知られる7が飛ばされたのも、気持ちが悪いです。


 6日前、やはり555が気掛かりです。ここで止まってくれるなら、まだこんな偶然もあるか……と思えます。夕方、家に帰ると、大学生のお兄ちゃんが嬉しそうにサバイバルナイフをいじっていました。今日、届いたばかりなのだそうです。ふとテーブルの上の説明書に目が留まり、そこにある5の並びを見て、私はゾッとしました。しかし直ぐに、それが型番で556であると気付いてホッとした次の瞬間、恐ろしい事に気付いてしまいます。型番は556ではなく、「556-1」。引き算で、555になっていたのです!


 5日前、もう私の心には444しかありません。しかも4と言えば、死を連想させる数字として不吉と扱われています。もしここで444を見てしまったなら、何か悪い事が起こるかもしれないと、不安で不安で溜まりません。だから私は、絶対に444は見ないようにしようと、細心の注意を払いました。幸い、下校時までに444とは出合っていません。このまま帰宅してテレビもスマホも見ないでいれば、444は回避できます。と、気を引き締めた時、その出来事は起こりました。一緒に下校していた友達が他の友達に、時間を尋ねたのです。


「今、何時?」

「えっと、4時44分」


 まさか耳から入ってくるとは思っていなかった私は、完全に意表を突かれました。友達が4のゾロ目で「ヤバい!」とか盛り上がっていた気がしますが、あまり覚えていません。頭が呆然と白くなる感覚の中、私は何事も起こらないで……と、ただ願いました。


 4日前、3日前、2日前と、ゾロ目は順調にカウントダウンして行きました。333は数学の問題の答え。222は社会の資料集で開いたページ数。111はスマホゲームで、お目当てのレアキャラを出せたガチャの回数。ただもうここまで来ると、私も慣れてきます。444の日も、結局は何も起こらなかったし、不気味は不気味だけど、そんなには気にしなくなっていました。しかしここで、ふと新しい不安がよぎります。000が来てカウントダウンが終了したら、どうなるんだろう?


 昨日、私はまたささやかな抵抗をしてみました。極力、可能性のあるものを避けて、000と出合わないようにしたのです。その甲斐あって、無事に一日が終わり夜になりました。時計で0時00分を見なくて済むよう、先に寝てしまいます。これで、000は回避できたはずでした。ピピピ! ピピピ! 私は、激しいアラーム音で目を覚まします。とっさに目をやったそこには、目覚まし時計の示すデジタル0:00の文字が……。恐怖で、私はおかしくなりそうでした。私は絶対に、0時ちょうどに目覚ましをセットしていません。誰かが、いえ得体のしれない何者かが、私に000を見せるために、アラームをセットしたのです。


 程なくして、母が血相を変えて部屋に入って来ました。出張中の父が倒れ、病院に運び込まれたと言うのです。脳梗塞で最悪の事態もあり得る危険な状態だと聞き、私は確信しました。このゾロ目のカウントダウンは、父の死を知らせるものだったんだ! と。


 私たち家族は、直ぐにタクシーで現地の病院に向かいます。私は永遠とも思える時間の中で、悔やんでいました。どこかに父に迫る危機に気付けるヒントがあって、見落としていたのではないかと。私がもっと真剣に考えていたら、お父さんは死なずに済んだのではないかと。


 病院に到着した私たちに待っていたのは、意外にも嬉しい知らせでした。倒れてから発見と治療が早く、幸いにも一命を取り留め、深刻な後遺症もないだろうという事です。私はホッとして、気付いたら号泣していました。私のせいで、お父さんが死んでしまわなくて良かった。またお父さんに会えるのだと、嬉しくて溜まりません。


 それにしても一体、私に何が起こっていたのでしょうか? ご先祖様なのか守護霊様なのか神様なのかは判りませんが、私に気付かせて、きっと父を助けようとしてくれていたのだと思います。777が省かれたのも、不吉さを知らせるメッセージだったのでしょう。今回、助かったのは、たぶん偶然なんだと思います。死んでもおかしくなかったものが、サイコロの目でたまたま生き残るように出た。そんな気がします。私は、私に気付かせようとしてくれた存在に、一所懸命に感謝を伝えました。


 病院には母だけが残り、私たち兄妹は朝の電車で帰る事になりました。落ち着いて面会が出来るようになったら、また父に会いに来ようと思います。そしてこの不思議な話を、ぜひ聞かせたいです。


 つい先ほど、私たちが病院から出た時、サイレンと共に救急車が入って来ました。目に入ったナンバープレートには、999の並びが……


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