第4話 楽しく学んで楽々徴収!【地租の課税方法を理解しよう・基本編】

 繰り返しますが地租は『非常に手間がかかる』税です。

 裏技もありますが、まずは正攻法で、どのくらい手間を掛けねばならないか、ざっと見ていきましょう。


①支配地域の耕作地(狩猟に適した森林・漁場も)の面積を算定する。現地住民は課税対象にしたくないゆえ、秘匿しようとしますが、頑張って見つけましょう。

②耕作地の生産力をランク分けする。

 漁業や狩猟を行っている共同体については、その地域の狩猟による収穫高や漁獲量を算定、生産力をランク分けする。

(狩猟については一定の禁猟区を儲け、その場所で狩猟する権利を地元住民から剥奪することで猟師たちの地租に換えていた国もある。※領主専用の狩猟場となり、時には狩猟を通じての軍事演習も行われた)

③ランクごとに一単位あたりの税率を決定する。

(貨幣経済未発達経済圏の場合は、貨幣換算せず想定される毎年の生産量に対する割合を決める)

④①~③(場合によっては⑤も加えて)地租の台帳を作る。

⑤納税義務者を決定する。ここで注意点は、納税義務者は土地所有者でなくても良いということ。

 実際、耕作者単位・世帯単位・村落単位・徴税請負人単位さまざまな単位で納税義務者が決められました。

⑥生産物の納税の場合、どこに集積しておくか、どのように管理するかを決定する。(国家の『財産』を運搬・保管・運用する仕事です。役人の資質、警備のための軍事力に気を配りましょう)

⑦納税義務者の変更(とくに死亡による変更)・耕作地の増減(耕作放棄地域の発生などに加え、新規開墾地を秘匿することによる課税回避問題)を念頭に、地租台帳を改定するサイクルを決定する。

(手間の問題から毎年改定は現実的ではない)

⑧災害時の減免措置についても決めておく。

 減免のためには「本来」の生産力を知っている必要がある。「適正な減免」は非常に難しいことに留意。


 順を追って、簡単に説明いたしましたが、いかがでしょうか?

 とくに広大な地域をあらたに支配下におさめた場合など、支配民族側が被支配国の土地や産物に明るくないことが多く、地租台帳を作成し、改定する行程がいかに手間がかかり、面倒かなんとなく分かっていただけたのではないかと思います。


【余談】

 地租は現代日本の『固定資産税』とは概念が違う。

 土地の生産力に対する課税であり、年貢や田租の概念の方が近い。

 いっぽう、都市民への課税は生産力ではなく、施設の利用料や業を行う権利金のような形で徴収された。

 これは国家の、家内制手工業やサービス業、商業の「生産力」を計測する能力がまだ未熟だったと言うことです。

(農民・都市民両方に課された人頭税などもありますが、【余談】の話は生産業に関係する税金に限っています)

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