第6話 楽しく学んで楽々徴収!【地租の課税方法を理解しよう・裏技編】

《制度設計が完成していない、もしくはなんらかの障害ですぐには設計された制度の通りの課税が出来ない場合に使える裏技……っていうか、裏技が便利すぎてこのまま課税し続けた国もありましたよ》


 できれば正攻法で地租台帳を作りたいところです。

 国家の運営は自国にどんな特色があり、どれだけの生産力を持ち、何に弱く、何に強いかを調べるところからはじまります。そしてその調査は、国家が終焉を迎えるまで行い続けねばならない類いのものです。(注)

 けれども、それが当面、行えないような状況は発生します。また、属国としたものの、ある程度の自由裁量・自治をあたえるような場合もあるでしょう。

 課税は行いたい。しかし地租台帳作成は困難である。

 そういうときに使える裏技はないのでしょうか?

 実はあります。

 以下、その方法を簡単にまとめてみます。

 (注):国力を量るという意味では、人口統計も必要なのですが、これは相当難しく、ヨーロッパでは十八世紀に入るまでは「正確な」人口統計は行われていませんでした。人頭税を徴収するために戸籍の作られた国もありましたが、戦争・飢饉……様々な理由で民は流民化しました。


《裏技》

①地租台帳が作れない地域を、河川や山脈、居住民族などで分割する。

(つまり最低限の調査は必要)

②地元住民の有力者を募り、徴税請負人候補を選定し、各区域、いくら納税できるか、競争入札させる。

(入札制度を成立させるには、貨幣経済の発達が必要)

③以下、毎年入札を繰り返す。

 貨幣経済が未発達の場合は、②のところで入札制度にせず、税としておさめてもらう石高を支配者側で、各地の有力者への事情聴取ののち決定し、有力者に徴税を委託する、という形を取ります。

 入札制度より粗が多く、有力者の既得権が固定化する、新規開墾地の秘匿問題は解決しないなどの問題は残りますが、すぐに地租台帳を作れない場合はこの方法も悪くありません。


 簡単でしょう?

 基本編でいかにも大変そうだった、耕作地の面積の算定や生産物の運搬・保管の問題は一挙解決。(石高による納付の場合は納付された後の保管の問題は残る)

 なおかつ物納の場合の生産物の交換価値の減少による税収の目減り問題も、入札方式なら徴税請負人が「貨幣でいくら納税する」と保証してくれるので心配する必要がありません。

 新規開墾地の秘匿問題も、耕作放棄地の問題も、「徴税を任せてもらいたい」徴税請負人たちが、秘匿された耕作地を探し出し、有望な耕作放棄地には新しい耕作人を派遣して、土地の生産力を確保してくれるに違いありません。

 もちろん調査をまったくしなくてよいわけではありませんが、すくなくとも、正攻法で地租台帳を作り、徴税するよりよほど簡単です。

 しかし、この方法にも問題点はあるのです。

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