第5話 映画デート

映画館にたどり着いて早々、守は売店に向かう。


「ポップコーンと飲み物買ってきます! ハナさんは何を飲みますか?」


「えーとアイスティーが良いです」


「了解です。行ってきます!」


守は売店に走って向かった。

一人残されたハナ。

することがなく張り出されていた映画のポスターを流し見していた。

その中で一つの映画が目が止まった。


それは少女漫画原作のラブストーリー。

冴えないヒロインとキラキライケメンとの恋の行方を描いたベタで王道なやつ。

この映画のポスターの役者の名前、挿入歌、作品名、上映日、キャッチコピー全部見ていた。


「買ってきました」


「はい、ありがとうございます。いくらでしたか?」


「金額は忘れたのでいいですよ」


「また、嘘つきましたね。レシートを出してください」


ハナは守に向かって手のひらを出す。

ただ、守はその手を見ずに、さっきまでハナが見ていたラブストーリーのポスターを見ていた。


「ハナさんはこの映画が観たいんですか?」


「別に観たいとかじゃ・・・」


「ははっ ハナさんから嘘の匂いがしました」


「えっ! うそっ」


「はい、嘘です。おっでも時間もちょうどいいですし、これにしましょう」


守は時刻版を指差す。確かにラブストーリーは10分後に始まる。


「でも守さんが観る予定だった映画は違うのでしょう?」


「俺が観たいのは、まだ公開前でした」


「プゴッ」

ハナは鼻を鳴らす。


「あー、そうか、ハナさんには嘘がバレバレなんでした。俺はハナさんが観たそうにしてたこの映画が観たくなったんです」


「プゴッ・・・」


「嘘じゃないでしょ?」

守はそう意地悪な顔で笑った。





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