第8話 第7話の最終話っていうのは嘘
とある生配信中の出来事。
「はい、どうもー! 世の中の小悪党を懲らしめる自警団こと、二人組YouTuberの・・・ボタンと」
「ウリでーす」
「さて、今回の企画はですね」
「何ですか? 何ですか?」
「はいっ! マスク美人のマスクを無理矢理外してみた!!!」
「ほう、マスク美人!」
「今、巷ではマスク詐欺が頻発しています。男を美人だと思わせといて、マスクを取ればブス。そんな男の夢を壊す事が許されますか!?」
売れないYouTuberの片割れ、ボタンがカメラの前で大袈裟に拳を握る。
「という訳で、今回はまず、インタビューを装い、街中のマスク美人を見つけます。マスクをとって顔を見せて貰うように頼み、そこでマスク美人が断りでもしたら・・・そんなマスク詐欺師のマスクを無理矢理剥ぎ取って、本性を晒してやります!!」
「ではっ! スタート!!!」
●◯◯◯◯◯◯◯◯
「マスク詐欺狩りに行こうよ!!」
「マスク詐欺狩りに行こうよっ!!」
「槍だって持ってるし」
「槍だって持ってるしー」
「鉄砲だって持ってるし」
「鉄砲だって持ってるしー」
「あ!」
「あっ!」
「デー・ト・中・マ・ス・ク美・人」
ボタンとウリは男女のカップルに話しかける。
「すみませーん、僕たちYouTuberで街中の綺麗な人にインタビューしてるんですよーお二人の関係は勿論、カップルですよね?」
「ハハッ、カップルに見えますか?」
カップルの男のほうが嬉しそうに質問を質問で返す。
「いこう・・・」
対して女は照れるように男の手をとって立ち去ろうとする。
「おーと、まだインタビューは終わってないですよ、おねぇさん。僕たちマスク美人の素顔も美人なのかを検証してるんですよ。どうかマスクを取って素顔を見せてくれませんか?」
「ごめんなさい。出来ないです」
女が断るとボタンとウリは二人の前に立ち塞がる。
「ほー、もしかしてマスクの中は人には見せられないほど醜い顔なんじゃありませんかなぁー?」
ボタンは挑発するが、女は無視して横を通り過ぎようとする。
ただボタンは通り過ぎ座間に女のマスクを剥ぎ取る。
そして、マスク美人の素顔が露わになった。
女の顔を見たボタンとウリは絶句していた。
なんせ、彼女の鼻は人間のものではない。
彼女の鼻は豚だったのだ。
「ひぃ! 化け物!!」
ようやく声が出たのは情けない声だった。
ボタンとウリはカメラを投げ捨てて、後ろを何度も振り返りながら、女から逃げる。
ただ女はそんな二人を気にせず、連れの男に背を向けて尋ねる。
「守・・・見た?」
「みっ・・・見てないよ」
男は目を手で隠してそう答えた。
「プゴッ・・・ごめんなさい。私は実はこんなに醜いんだ。守に好きになって貰って嬉しかったけど、守はこんな私の事もう好きではないよね・・・ごっごめんなさい」
女は俯きながら男から離れようと走りだす。
女は逃げるように走るのは、好きな男にこれ以上、嫌われたくないから。
「待って!!」
男はすぐに追いかけて女の手を掴む。
「ごめん。見てないって言ったのは嘘。ただ、これからの言葉には嘘はこれぽっちも混じっていないから、聞いてほしい」
男は断言すると、女の肩を掴み回転させ、顔を無理矢理合わせる。
二人の顔の距離はおよそ31センチ。
「ハナ、俺は貴方の事が好きです。中身は勿論、顔も全てタイプです!!」
女にとって男の今の声は聞いた中で一番大きい。
「そんなはずない、嘘つかないで。私の鼻はブタなんだよ。こんな顔誰も好きになってはくれない」
女も張り合う様に声が大きくなる。
「嘘なんかじゃない!! てか、ハナなら分かるでしょ」
「分からない!!」
「嘘つきは君の方だ。俺が嘘を言っているのなら、ハナは嘘の匂いが分かるはずだ」
「分かるはずだから、分からないんだよ」
ハナの声量が途端に小さくなる。
「守の言葉に嘘がないからこそ、分からなくなる。何で私の素顔を見て、何で私を好きなままなの? さっきの二人も叫んでいたけど私って化け物みたいでしょ?」
女は今まで素顔見せて言われた言葉を思いだす。
女はこれらの言葉と同様な事を言うのではないかと身構える。
だが、男が返した言葉には全く別だった。
「化け物なんかじゃないよ。可愛い、メチャクチャ可愛い。この世の何よりも可愛い。更に愛おしく思う」
女は予想外の可愛いの連呼で、驚きのあまり何も言えない。
ただ顔が紅くなるだけ。
「だからさぁ、これからも末永く隣に居てくれない?」
そんなプロポーズの様子は生配信中のカメラで世界中に拡散する。
『短編』高嶺の花のハナさんはブタの鼻だった話 一滴一攪 @itteki
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