第2話 出会い
「何でバレたんだ?・・・」
守は周囲の温かい眼差しに耐え切れずに次の駅でそそくさと降り、ホームにある水色のベンチに腰掛けて地面を見つめる。
そんな彼の性格を説明するのは一つの単語で事足りる。
優しい。
これだけで十分だ。
実際に守の良いところを教えてほしいと彼の知人310人に尋ねても、全員が最初に優しいと答える。
困ってる人や、悲しんでいる人を見るとほっとけない。そんな気質なのだから当たり前だ。
だが、守自身は優しいと言われるのを嫌う。
何故なら、守は人は皆、優しいと本気で思っていて、彼にとって優しいと言われるのは、息をしていて偉い!と褒められるのと同じなのだ。
守は優しいと言われると馬鹿にされてる気分になる。
だったら人助けなんかしなければいいのに、困ってる人を見つけるとつい手を差し伸べてしまう。
その結果、嘘をつきながら人助けをし、すぐにバレる構図が出来上がる。
不器用だが、好感が持てる生き方。
だから大柴守を嫌う人はそういない。
「貴方は嫌な人です」
そんな彼に嫌味を言うのはボタニカル柄のワンピース身につけ、立体型の白いマスクをした女。
「貴方、先程電車内でご老人にお腹が痛いと嘘をついて、半ば強制力に席に座らせました」
自分は嘘がつく人が嫌いだと女は言った。
守は生まれて初めて直接、自分を嫌いと言う人物を目の当たりにした。
驚きながらも守はその女の事が気になって、女の方に顔を上げた。
目に映った女はとても美しかった。
雰囲気、佇まいには気品を感じ、マスクで顔の下半分は隠れているが整っていることが確信出来る顔立ち。
世の男にとって届き得ないのような人。
まさに高嶺の花。
守は自分を嫌う人物が美人で嫌な気がせず、笑みがこぼれる。
「何故、笑っているの?」
女はそんな守にイラついて、眉間に皺を寄せる。
「ふっ、すみません」
「貴方、嘘をついたのにちっとも悪びれてませんね」
守はいつも言われることと逆の事を言われるのが嬉しくて、それが顔に出たのが彼女の不興を更に買った。
「貴方の性根をたたき直してあげます」
「はははっ! ぜひともお願いします」
「嘘つきは泥棒です。懲らしめてやります!!」
こうして二人は出会ったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます