世界とキャラとアクション、輪郭のはっきりした物語。

 この作品の魅力はなんといってもその中身の充実にあります。


 まず世界設定。この作品はアクションファンタジーであり
舞台は人類が滅んだ後の世界です。
そこで人狼や吸血鬼、キノコになりたい竜人や既にキノコなエルフなど、
様々な亜人種達が教会の尖兵『ベナンダンテ』となって活躍する……
この辺りは作者様が書かれたあらすじが分かり易いのですが、

この世界観の作り込みがすごい。
マ◯ンクラフトのプロが作った街くらい精密。

何があった世界で、何がある世界で、今何が起きている世界で、
そこで今どんな存在がどのように息をしているのか、
そういった世界の輪郭がくっきりしています


 次にキャラクター。本作には主人公と周辺、そして章ごとに
多彩なキャラクターが登場します。

その一人一人のキャラクター造形が深い。
見た目や性格、思考回路にアクションらしく戦闘スタイル、
全てが細かく考えられています。

特に圧巻なのは登場人物の戦闘理論と思考法。
単純な『一撃必殺を狙う』『奇襲が得意』みたいな描写ではない、
『キャラが何を考え、どういうスタンス・テーマ・狙いで戦おうとしているか』
が細かいので、戦闘描写が骨太で格好良く、時に身体能力を活かした勢いある、
時に緻密に頭を働かせた、納得感の深いものになっています。

 そしてもう一つ、前述のように本作の登場人物は定番の亜人種です。
基本的にこういった存在は顔パスというか、ファンタジーを読む人間なら
今まで様々な創作物で触れてきたことで理解している
「暗黙の了解」的キャラクター造形を持っています。

そこにもう一塩が上手い。
借りてきた「この種族ってこうでしょ?」な記号で済ませずに、
自分の作品として一から種族を練っているのがよく分かる造形です。

こうした『血肉の通った個人としての存在』と『生物としての構造』、
言い換えればハードとソフトの両輪からしっかり支えられた魅力的で
輪郭のはっきりしたキャラが目白押しなのです。
私の大好きなキノコちゃんみたいな、チョイ役に至るまで
そうなっているのですから脱帽です。


 そして最後にアクションの表現の仕方。
何が起きていているのかから、細かい息遣い、鈍い痛みまで
圧巻の描写力なのですが、これに関しては是非、実際に読んでいただいて
コメント欄でも毎度絶賛の嵐な迫力に酔いしれていただきたいです。


豪快にして繊細、大胆にして丁寧、まるで主人公の戦闘スタイルのような、
タイトルそのまま磨かれた銀が如くギラリと光る本作を是非ご一読下さいませ。

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