あとがきのような何か

[20211225] 一日余った

 一日余っちゃった。いや、アドベントカレンダーなので24日で終わりでも良いのですが。せっかくなので更新しようと思います。

 アドベントカレンダー、お疲れ様でした。


 本編を読んでいないとわかりにくい部分もあったかと思いますが、少しでも面白がっていただけたなら嬉しいです。

 本編では、ユーヤという主人公の一人称なので、彼が知らないことは知らないまま話が進んでしまいます。様々な土地を旅しますが、通り過ぎる中でわかることはほんのわずかで、大抵のことには気付かずにまた土地を離れることになってしまいます。

 ユーヤを助けてくれる優しい人も登場しますが、ほとんどの場合、ユーヤはその人がどんな人なのかわからないまま別れることになります。

 今回の『こぼればなし』のある部分は、そういった本編でわからないまま終わった部分の補足です。


 もともと『旅をする』を書き始めたときは、世界を広く書きたいな、と思っていたような気がします。

 この『こぼればなし』が世界の広さを感じられるものになっていたら、とても嬉しいです。




【フィウ・ド・ラク】


 第一章の後半で行動を共にしたデチモさんの語りでした。この世界に来たばかりのユーヤと行動を共にして、言葉の通じないユーヤの面倒を見てくれた良い人です。


 ユーヤとシルという、言葉が通じずに物も知らない目立つ二人組を迎え入れるとき、その反応の不思議さを感じるとき、人はそこに何かしらの物語を見出して空白を埋めようとするんじゃないだろうか、と思ったのがこのお話の種です。

 面倒な書き方をしてしまいましたが、ひらったく言うとユーヤとシルの二人の旅は、その土地の人から見ると「都市伝説」のようだなと思ったのでした。

 特徴的な旅人がやって来て、親切にすると富を落としてまたどこかに行ってしまう。

 それを自分たちの世界の中で解釈したとき、民話のようになるかもしれないな、なんて思います。ユーヤとシルの二人がこうやって、新しい民話として語り継がれたら面白いだろうな、と思って書きました。


 作中に出て来た「アニェーゼとアルミロ」のお話や雨の女神様のお話については、第二章のガイドをご覧ください。


第二章 フィウ・ド・チタ ガイド

https://kakuyomu.jp/works/1177354054935110451/episodes/1177354054935277131


 この辺りの昔話は、オージャという地域の中でもいくつかのバリエーションがあるという設定です。ガイドで紹介しているのは、代表的なものですね。




【トウム・ウル・ネイ】


 本編だと第六章のお話。トウム・ウルと呼ばれる空を飛ぶ大きな生き物(ユーヤは「鯨」に似ていると語っていました)の上で暮らす人たちです。

 ルーと呼ばれる翼竜のような生き物に騎乗して、鳥の群れを家畜として暮らしています。そして、トウム・ウルの状態や風の様子によって、トウム・ウルからトウム・ウルへと引っ越しを繰り返して暮らしています。空の遊牧民です。

 本編だと一章分しか使わずに、しかもシルとユーヤの関係としても重要なイベントが起こる章だったので、考えていた設定をほとんど出せずに終わった土地でした。土地って言って良いのかな。

 男が女を攫いにくることが結婚、という風習についてずっと書きたいなと思っていたので、今回書けて嬉しいです。

 でも実は、これでまだ結婚の手順は半分くらいです。また、結婚で名前が変わるのは女だけでなく男も変わります。この辺りは、今回の花婿が浮かれすぎたせいで語りに全然入れられませんでした。

 きっとこの花嫁と花婿はこの先も仲良く暮らしていくことができるだろうと思います。


 トウム・ウル・ネイについては、第六章のガイドをご覧ください。


第六章 トウム・ウル ガイド

https://kakuyomu.jp/works/1177354054935110451/episodes/1177354055471479159




【タザーヘル・ガニュンとウリングラス・ナングス】


 第九章と第十章に出て来たウワドゥさんの語りです。時間としては、第八章の終わりから第九章。第八章時点だと、ユーヤはまだウワドゥさんを認識してないです。なので名前が出るのは第九章からです。

 本編のウワドゥさんは、ノリが軽くて面倒見が良いお兄さん、というイメージで書いてました。何かあっても「大丈夫、大丈夫ナーナン・ナーナン」って気楽に言ってくれる人だと思います。

 ユーヤから見ると細かな言葉のニュアンスはわからないし、どこまでそれを感じ取るかも状況次第なので、どこまで書けていたかわからないですが。なので、ユーヤから見たときと、もしかしたらちょっと雰囲気が違って見えるかもしれません。


 タザーヘル・ガニュンではものの値段は交渉して決めるものなので、なんのためらいもなく言い値(時にはそれ以上)を支払うユーヤは変な顔をされます。

 でも、ここの人たちは出されたお金は受け取ります。受け取った上で、交渉がなかった分をその後の態度で返そうとします。「取り分」という言葉が何度か出てきますが、きっとそれは彼らにとって大事な考え方なんじゃないかな、と想像しています。

 この地域の人たちが何かとユーヤにおまけをくれるのは、それが理由です。

 みたいな設定は本編で書けなかったのですが、それもようやく書くことができました。


 タザーヘル・ガニュンやアズムル・クビーラについては第七章と第八章のガイドを。


第七章 タザーヘル・ガニュン ガイド

https://kakuyomu.jp/works/1177354054935110451/episodes/16816452218336986036


第八章 アズムル・クビーラ ガイド

https://kakuyomu.jp/works/1177354054935110451/episodes/16816452218744617635


 ウリングラス・ナングスやドゥルサ・ナガについては第九章と第十章のガイドをどうぞ。


第九章 ウリングラス・ナングス ガイド

https://kakuyomu.jp/works/1177354054935110451/episodes/16816452219952673287


第十章 ウリングモラ・ナングス ガイド

https://kakuyomu.jp/works/1177354054935110451/episodes/16816452220666702476




【旅の始まり】


 次のお話は誰に語ってもらおうかといろいろ考えていたのですが、不意にシルが話し始めてくれたので、そのまま書いてみることにしました。

 ユーヤとシルが周囲からどう見えるか……という趣旨とは少しずれてしまいましたが、ユーヤ以外の視点から見たユーヤでもあるから、まあ良いか、と。

 それになんとなく、旅の終わりが見えてきて、でもまだ終わってない今にちょうど良いような気もしました。特に根拠はないのですけれども。

 ユーヤは何もわからないまま旅を始めることになってしまいましたが、シルの視点でもやっぱり何もわかりませんでした。この二人は二人して、本当に何もわからないまま旅をしていますね。


 本編の第一章、デチモさんに出会う前までのお話です。

 シルは旅の中でいろんな経験をして成長しているので、今(第十三章くらい)だと語りの雰囲気が変わってそうな気もします。

 どうしてユーヤと一緒にいるのかも、シルの中で少しずつ形を変えているかもしれません。




【アドベントカレンダー企画のこと】


カクヨムでアドベントカレンダー2021

https://kakuyomu.jp/user_events/16816700429205593518


 今年はどうしようかな、と思っていたのですが、ツイッターで「今年はどうするのかな?」ってツイートを見かけてその勢いで始めました。

 考えたら十二月はカクコン開始時期なんですよね。去年も始めてから気付いたけど。みなさんカクコンでわいわいがやがやしてる中、一緒に遊んでくれてありがとうございます。

 わいわいできて楽しかったです。こういう遊びが好きです。


 参加してくださった方ももちろん、参加作品を読んで楽しんでくださった方もありがとうございます。

 それ以外でも、企画を見かけて「なんか面白そうなことしてるぞ!」って思っていただけるのもとても嬉しいです。そう、こう、「なんか面白そうなこと」がしたいんですよね。

 またどこかでわいわい遊べたら嬉しいです。

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旅をする──こぼればなし(アドベントカレンダー2021) くれは @kurehaa

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