■ アズムル・クビーラ ガイド ■

【アズムル・クビーラ】


 アズムル・クビーラは、タザーヘル・ガニュンの砂漠の中で最も大きなオアシスだ。

 砂漠の中にあるが、ほかの地域に比べて過ごしやすい。日射しはほかの地域と変わらない強さだが、昼間の暑さは穏やかだ。夜は涼しく、時期によっては明け方に霜が降りることもある。

 周辺に動植物が多く、食物も豊富だ。特に、暑さにも寒さにも強いジェロは、この辺りではよく見かける。ジェロはその強い酸味が特徴的な果実だが、霜が降りるほどの寒さで甘みが強くなる。

 アズムル・クビーラで飲まれるジェロ茶が甘いのは、そのためだ。


 アズムル・クビーラというのは、その名前の通りドラゴンの骨アズムル・クビーラに由来する。

 街の地下には、実際にドラゴンの骨アズムル・クビーラがある。ドラゴンクビーラは、火の精霊ルハル・ナー水の精霊ルハル・マーによって生み出された精霊ルーハであると言われている。

 ドラゴンの骨アズムル・クビーラは街の者たちによって管理され、誰でも見ることができるようになっている。街の者は時折、ドラゴンの骨アズムル・クビーラを見に行って、精霊ルーハへの祈りを捧げる。

 精霊であるドラゴンクビーラの嘆きが、この街の始まりだという。


 火の精霊ルハル・ナーによって大地が燃やされ、水の精霊ルハル・マーが水になり、星になった後、タザーヘル・ガニュンは人をを産んでこの地に住まわせた。けれど、火の精霊ルハル・ナーによって燃やされた大地は過酷で、人はなかなか大地を良くすることができなかった。

 人々は、わずかな水の近くではなんとか生きていたが、砂漠の中に入ればたちまちに弱って死んでいった。やがて人は、大地を良くするという言葉を忘れ、人と人の間で争うようになった。

 ドラゴンクビーラは自らを産み出した火の精霊ルハル・ナー水の精霊ルハル・マーがいなくなってしまい、深く悲しんでいた。その上、人が大地を良くすることを忘れ争う様子を見て、悲しみは激しい怒りになった。

 ドラゴンクビーラの怒りは激しく、砂嵐となって砂漠を覆った。厚い砂嵐のため砂漠に日は射さず、またドラゴンクビーラの力でわずかに生えていた草木は凍りつき、生き物たちは凍えて多くが死んでいった。

 タザーヘル・ガニュンはドラゴンクビーラの怒りを鎮めるために、砂漠の真ん中の地下にその体を埋めた。ドラゴンクビーラの怒りは落ち着いたが、悲しみは尽きることなく溢れ、大地を凍らせた。

 タザーヘル・ガニュンはドラゴンクビーラに、人々を助けるよう言った。人々が大地を良くしようと生きているならば、それを助け、悲しみは慈悲ラッハにしなさい、と。

 それ以来、ドラゴンクビーラの悲しみはドラゴンの慈悲ラハル・クビーラになった。

 ドラゴンの慈悲ラハル・クビーラは過酷な砂漠で人を助ける。水も溢れ、草木も産まれ、生き物も集まり、人はそこに街を作った。

 ドラゴンクビーラは今は骨だけになったが、それでも人々に慈悲ラッハを与えてくれているのだという。


 人々が大地を良くすることを忘れると、ドラゴンの慈悲ラハル・クビーラはまた激しい怒りに変わると言われている。

 なので、この街の人々はドラゴンクビーラをとても大切に思い、祈りを捧げるのを忘れない。




【ラハル・ラマー】


 アズムル・クビーラの地面の下にはドラゴンの慈悲ラハル・クビーラがある。この街が過ごしやすいのはそのためだ。

 この街の大抵の家は、地下に貯蔵庫を持っている。地面の下は冷たく、ドラゴンの慈悲ラハル・クビーラを集めて置いておけば水が凍るほどの温度になる。

 この街の人々は地下の貯蔵庫で、暑さで傷む食材を長持ちさせたり、果物や飲み物を冷やして昼間の暑さをしのぐために使ったりしている。


 特に好んで食べられているのが、氷の慈悲ラハル・ラマーと呼ばれるものだ。

 綺麗な水を凍らせて細かく砕く。そこに、バーランの甘い茎や果肉を細かく刻んで混ぜる。場合によってはほかの果実を混ぜたり、冷やしたジェロ茶と混ぜたりもする。

 ラマーを使う非常に贅沢な食べ物だが、アズムル・クビーラでは珍しくないものだ。




【エーラーナー】


 エーラーナーは、砂漠に生きる鳥だ。

 体はとても大きく、体の位置は人の腰よりも高く、頭の位置は人よりも高い。がっしりとした丈夫な足があり、羽はあるが多少飛び上がることができるくらいで、空を飛ぶことはない。

 その頑丈な足で、砂を蹴って移動する。かなりの速さで駆けることもできる。

 羽の色はくすんだ灰色で、その中で長い尾羽だけが鮮やかに赤い。地面を駆ける時、この尾羽が舵の役目を果たしている。

 暑さや乾燥に強く、少量の水や食べ物だけでもかなりの長期間を生き延びる。

 砂漠に迷って死にかけた持ち主を背中に乗せて、かなりの長い距離を飲まず食わずで走り続け、街まで戻ってきたエーラーナーの話も残っているくらいだ。


 エーラーナーは、大地を良くする人が砂漠を渡ることができるように、羽の精霊ルハル・ヤーナが産み出して人に与えたものだと言う。

 タザーヘル・ガニュンでは「良いエーラーナーの持ち主は長生きする」と言われており、旅の友としてとても大切にされている。

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