出会い、別れ、そして新たな人生や関係性を選択するまでの物語

高校時代に知り合った『秋山晴夏』と『岸真琴』。互いに親友となった彼女達は、夢や希望を抱いて大学進学と同時に上京し、ぞれぞれ運命の相手と出逢う。愛情を深め輝かしい青春を過ごし、幸せになることを誓ったはずなのに、いつしか大人になっていくにつれて擦れ違い、身も心もパートナーから離れていってしまう――。

二人の女性を主軸とし、愛する人と出会い、離別し、そして再生していくまでの姿や半生が描かれた、まさに重厚な『人間ドラマ』でした。全体的に、邦画やテレビドラマシリーズのような雰囲気を感じます。

晴夏は陸翔に、真琴は慎也に惹かれていくまでの過程だけでなく、結ばれてから破滅までの道のり、そしてそこからどう再起するのかといった、揺れ動く感情やそれぞれの行動というものが、非常に丁寧に描写されていました。
家族や知人といった周囲の人々とのリアリティ溢れる関係性も描かれ、創作物でありながら実在感のある『人生』として受け止めることができました。
晴夏や真琴を裏切るような男性陣の言動、そして物語全体のオチ部分においては、人によっては賛否両論や好みの分かれるところだと思います。しかし個人的には、落とし所としては及第点で、丸く納まったベターな結末だったのではないかなと感じます。二人だけの間で「じゃあ別れましょう、ヨリを戻しましょう」という問題ではないために、簡単に決断を下せないのもリアルだと思いました。
そして作品のテーマとなっている『人生』や『別れ』というものは、他人がどうこう口出しするものではないでしょう。そう感じさせてくれる読後感でもありました。

ただ、ストーリーの面において文句はありませんが、物語の展開・構成や文章という部分では、色々と気になる点が多かったです。
大学卒業以降の社会人編は、時間軸が急に飛んだり戻ったりまた進んだりなどバラバラなので、混乱してしまいそうになりました。『この二人は別れました。では何故そうなったのか?それをこれからのエピソードで見ていきましょう』という表現技法や手法は実際ありますが、本作においては時系列順に物語を進め、徐々に変化してしまう各人の関係性や心情といったものを丁寧に描いた方が、作風にはマッチしていると感じます。
そして文章においても、地の文や会話文がかなり癖の強いものとなっているため、人を選ぶかなと。より多くの読者に読んでもらうためには、文体も分かりやすく丁寧に書く必要があると思いました。

ですがそこの部分を除けば、『人間ドラマ』としては非常に濃密かつ魅力的な一作だと思います。読んだ人の数だけ印象が変わったり、違った感想を抱くでしょう。そういう作品は良作だと思います。